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相続税の更正の請求とは?手続き方法や申告期限、該当するケースを解説

相続税申告後に「相続税を払いすぎていないか」「間違って申告してしまった」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。特に、相続税は不動産など現金や預貯金以外の財産を評価して税額を計算するため、誤解や間違いが生じやすいものです。そのため、相続税の申告・納付を期限までに済ませた後でも、過払いであったことが認められれば還付を受けられます。本記事では、相続税の更正の請求について、申告期限や手続きの流れを解説します。更正の請求が発生する5つの事由についてもあわせて紹介しますので、ご自身のケースに当てはまるかご確認ください。

目次
相続税の更正の請求とは
相続税の更正の請求が発生する5つの事由
3ステップ 更正の請求に必要な書類と手続きの流れ
更正の請求を受け付けてもらえなかった場合の対処法
まとめ

相続税の更正の請求とは

更正の請求とは、払いすぎた相続税を還付してもらう手続きを指します。相続税申告後に、本来よりも払いすぎていたことが発覚した場合に「更正の請求」が可能です。逆に、本来の納税額よりも少なく申告してしまった場合は、「修正申告」により不足分を追加で納税する必要があります。なお、修正申告では、不足した相続税だけでなく延滞税なども納める必要があるので、気づいた時点で早急に手続きを進めましょう。また、納めるべき相続税を過少申告して放置していた場合、ペナルティが科せられます。

ペナルティについて詳しく知りたい方は、こちらの記事「相続税の申告漏れ!ペナルティとミスがバレる原因とは」を参考にしてください。

申告期限

更生の請求は、誤りに気づいたらいつでも手続きできるわけではありません。国税通則法では、原則として相続税の申告期限から5年以内に請求する必要があります。相続税の申告期限は相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となるので、実質5年10ヶ月が更正の請求の申告期限です。しかし、特別な事由に該当する場合は、発生から5年を過ぎても手続きが可能です。これを、相続税法で定められた「更正の請求の特則」と言い、事由を知った翌日から4ヶ月以内が期限となります。ただ、国税通則法と相続税法は、法体系上で一般法と特別法の関係にあるため、通常は特別法である相続税法の規定が優先されます。5年の期間があるからと安心して、本来の期限である4ヶ月が過ぎてしまう方も多いので注意しましょう。

相続税の更正の請求が発生する5つの事由

相続税の更正の請求が発生するケースは、多岐にわたります。ここでは、前述で触れた「更正の請求の特則」に該当するケースについて詳しく解説します。

未分割財産が分割された場合

相続では、亡くなった方の財産ごとに誰がどれだけ相続するかを話し合う「遺産分割協議」が行われます。しかし、相続人間で話し合うため合意に達するのが難しく、時には、相続期限である10ヶ月以内に協議がまとまらないケースも少なくありません。仮に、遺産分割協議がまとまらなくても、相続税の申告期限は延びません。相続税の申告期限までに遺産をどのように分けるか意見がまとまらない場合は、法定相続分に基づいて相続税申告を行います。仮定に基づく相続税申告は、遺産分割協議がまとまるまでの一時的な措置です。最終的にどのように遺産が分配されるか確定した際は、更正の請求によって正確な相続税を納める必要があります。

関連記事:相続財産が分割されていないときの申告はどうする?
関連記事:遺産分割協議書を作成できる人とは?自分で作成する5つの手順を解説

各種控除や特例が適用される場合

上述で、遺産分割協議がまとまらなかった場合、一時的に法定相続分で相続したことにして申告を行うと説明しました。その後、どのように財産を分けるのか確定したら、配偶者の税額軽減額や小規模宅地等の特例など、各種特例や控除を利用できるようになります。特例を適用することで、最終的に支払う相続税額が減少する可能性があり、払いすぎが判明した場合、更正の請求が可能です。

関連記事:相続税ゼロ円申告とは?少額の場合でも申告は必要?

遺留分侵害額が確定した場合

「遺留分」とは、配偶者や子などの法定相続人が最低限相続できる割合を指します。たとえ遺言書で全財産を他の相続人に分け与える指示があっても、法的に遺留分を受け取れる権利は保証されているのです。侵害された相続人が最低限保障されるべき遺産を取り戻す権利を「遺留分減殺請求」といいます。請求が確定した場合、相続人は侵害された遺留分に応じて支払うべき相続税額が確定します。

関連記事:遺留分侵害額請求がされた場合の相続税の申告 具体例から相続税の申告方法を確認

遺言書の発見または遺贈の放棄があった場合

遺言書は亡くなった人の意思を示すものであり、遺産分割協議書よりも原則的には優先されます。(ただし、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議による相続も可能です。)法定相続人が遺言書の存在を知らずに相続財産を分割し、それぞれが相続税を支払ったと仮定します。後に遺言書が発見されたことにより、遺産分割が再度行われ、相続税の払いすぎが明らかになれば、更正の請求が可能です。

なお、相続税のクロスティでは「遺言の作成」をサポートしております。相続を熟知している税理士が財産の洗い出しから一人ひとりに適した遺言書作成の提案を行い、二次相続まで考慮した相続税対策が可能です。相続争いを未然に防ぎたい方は、ぜひ、相続税のクロスティへご相談ください。

関連ページ:遺言の作成

相続人に異動があった場合

権利を喪失する廃除や隠し子などによって相続人の数に変動が生じることを、相続人の異動と言います。相続人の数に変動が生じた場合、相続税の申告期限の延長が可能です。延長期間内に遺産を分割し、再度申告書を提出する手続きが行われます。具体的には、亡くなった方が認知していた子の存在が判明した場合などが分かりやすいでしょう。上述の場合、「亡くなった方が子を認知していたかどうか」が重要なポイントとなります。仮に、法的な根拠があっても、嫡出子以外は、認知されていなければ認められません。

3ステップ 更正の請求に必要な書類と手続きの流れ

相続税の更正の請求手続きの流れは、以下の3ステップです。

1. 必要書類を揃える
2. 必要書類を税務署に提出する
3. 還付を受ける

なお、還付を希望する相続人ごとに、更正の請求書などの必要書類を作成しなくてはいけません。不備がないよう、しっかりと準備しましょう。

1. 必要書類を揃える

必要書類は、以下のとおりです。

相続税の更正の請求書および次葉
更正の請求の経緯を証明する書類
マイナンバーや本人確認書類
修正申告書 など

相続税の更正の請求では、理由となる事実を裏付ける書類が求められます。例えば、更正の請求の申告書だけでは理解が難しい場合、具体的に修正が加えられた財産や金額をわかりやすく説明するために、修正申告書や経緯を証明する書類を添付して申告する必要があります。「未分割財産が分割された場合」が理由であれば、遺産分割協議書(コピー)を添付しましょう。なお、「相続税の更正の請求書および次葉」は、以下の国税庁公式サイトでダウンロードが可能です。

国税庁:相続税の更正の請求書(令和5年1月分以降)(外部リンク)
国税庁:相続税の更正の請求書の次葉(外部リンク)

2. 必要書類を税務署に提出する

必要書類が整ったら、期限内に税務署に提出しましょう。税務署に提出する方法は、直接持参または送付、電子申告です。提出後、税務署では審査が行われ、必要に応じて電話や面談が行われて請求内容が確認されます。税務署の視点から見ると、修正申告(自主的)が提出された場合は、ほぼチェックなしで処理される一方、更正の請求に関しては内容が詳細に検証されます。なぜなら、納めた相続税を返してもらう行為となるため、税務署としてもさまざまな書類をもとに慎重に審査・対応しているためです。そのため、審査には通常、2〜3ヶ月ほどかかるのが一般的です。

3. 還付を受ける

更正の請求が妥当だとなれば、相続税の更正通知書および国税還付金振込通知書が送付されます。その後、約2週間以内に指定の金融機関口座に還付金が振り込まれます。

更正の請求を受け付けてもらえなかった場合の対処法

更正の請求が税務署によって受理されない場合、還付は行われません。この場合、税務署から「更正すべき理由がない旨の通知書」が発送されます。不服があれば、以下の手続きを検討しましょう。

国税不服申立制度を利用する

国税不服申立制度は、税務署が行った処分に不服がある場合に、その処分の取り消しや変更を求めて不服を申し立てる制度です。税務署に再審査を請求するだけでなく、国税不服審判所に対しても審査請求が可能です。どちらを選ぶかは個々の状況によりますが、提出書類が多く、専門知識が必要な場合があるため、税理士などの専門家に相談して検討するとよいでしょう。なお、請求は、通知書を受け取った翌日から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。

税務訴訟を起こす

もし国税不服申立制度でも納得がいかない場合、6ヶ月以内に裁判所に「取消訴訟」を起こすことができます。名古屋で税務訴訟ができる裁判所は、名古屋地方裁判所や名古屋高等裁判所です。税務訴訟には多くの書類と専門知識が必要であり、勝訴の可能性が高いと断言できないため、専門家を交えて検討することをおすすめします。なお、クロスティは相続専門の税理士事務所として、税理士業界でトップクラスの実績を有しています。お客様に寄り添い、さまざまな手続きを行うため各種専門家と連携しサポートいたします。相続税について疑問点がある方は、お気軽にご相談ください。

更正の請求をする際の注意点

相続税に限らず税金を過大に支払った場合、通常は申告期限から5年以内であれば更正の請求が可能です。しかし、更正の請求が可能なのは、以下の2つの要件を満たした場合のみです。

法律に従っていない場合
計算誤りの場合

税法上の特例措置を適用するためには、特定の事項を申告書に記載する必要があります。この記載がない場合、特例措置が適用されません。ただし、特例措置が適用されなかったとしても、申告書の記載自体に誤りがなければ、その申告は法律に違反していないため、更正の請求事由に該当しません。例えば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は任意規定であり、後でその特例を適用すれば有利であることが判明しても、特例の適用は納税者が選択できるものであり、選択が法律に違反していないかぎり、更正の請求が認められないのです。そのため、特例の適用には、慎重な選択が必要です。

まとめ

相続税を本来よりも多く納めていた場合、更正の請求で還付してもらいましょう。ただし、納税額が多かったからといって必ずしも還付されるわけではありません。また、相続税法では更正の請求期限が4ヶ月と短いため、早めの対応が大切です。申告期限を逃すと相続税の還付が受けられなくなるので、更正の請求を考えている方や今後相続税を納める予定の方は、相続を専門に扱っている税理士などの専門家に早めに相談しましょう。

最後に

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