親からお金を借りると税金がかかる?借用書や死亡時の返済リスクも解説

「消費者金融には頼りたくない。でも、すぐにお金が必要」
そんなとき、つい頼りたくなるのが親という存在ではないでしょうか。
身近で信頼できるからこそ、気軽に借りてしまいがちです。しかし、親子間のお金の貸し借りは、ちょっとした認識のズレで思わぬ税金トラブルに発展することもあります。実際、きちんと返すつもりだったのに「贈与とみなされて贈与税がかかった」というケースも少なくありません。
本記事では、親からお金を借りる際に気をつけたい税金のルールを分かりやすく解説します。親の死亡時における借金の取扱いについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
・親から借りたお金に贈与税が課せられるのか
・親から借りたお金が非課税になるケース
・親からの借金が贈与とみなされないためには
・親から借りたお金を返す方法
・親から借金、返済前に死亡したら誰に返すのか
・親にお金を借りたいけど言いづらいときの上手な伝え方
・親からお金を借りる場合の注意点
・まとめ
親から借りたお金に贈与税が課せられるのか
親からお金を借りただけのつもりでも、借入金額や返済の仕方を間違えると「贈与」とみなされて、贈与税がかかる可能性があります。
というのも、「贈与」とは、お金をあげる人・もらう人の双方が「無償であげる」「もらう」と合意して成立するものです。つまり、お金を返すつもりがない、あるいは返済の証拠がない場合は、税務署に「贈与」と判断されやすくなるのです。一方で、返済する前提で借りたお金は「貸付金」として扱われ、贈与税を含む税金はかかりません。
そもそも贈与税とは
親や知人からお金や財産を無償でもらったときにかかるのが「贈与税」です。贈与税は、「1月1日から12月31日までの1年間に、誰からどれだけ財産をもらったか」に基づいて、受け取った人が申告して納める税金です。年間110万円までは非課税ですが、基礎控除額を超えた部分に対しては贈与税がかかります。
注意したいのが、贈与を受けた相手との関係性によって税率が異なる点です。贈与財産は、以下の2つに分けられます。
✓ 一般贈与財産:兄弟や配偶者など直系尊属以外の親族や他人から贈与を受けた場合
✓ 特別贈与財産:直系尊属の親や祖父母から、1月1日時点で18歳以上の子(孫)へ贈与する場合
ただし、親から子であっても、贈与年の1月1日時点で18歳未満であれば、「特例贈与」ではなく「一般贈与財産」として扱われます。例えば、18歳の子が母から成人祝いとして150万円相当の貴金属を受け取った場合は、「特例贈与」として課税されます。一方、16歳の子が同じように贈与を受けた場合は、「一般贈与財産」に該当し、特例贈与よりも高い税率が適用されます。身近な人とのお金のやり取りで発生する税金のため、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
贈与税の詳しい税率について知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてください。
【関連記事】相続税と贈与税どっちが得?税率、特例の活用や相続税を減らす3つのポイントを解説
親から借りたお金が非課税になるケース
親からお金を借りても、以下の3つのケースでは、贈与税が課せられない可能性があります。
● 生活費や仕送り
● 住宅購入資金
● 結婚式費用
ただし、使い道や贈与されたものによっては、非課税の対象外となるため、注意が必要です。
生活費や仕送り
親から子への仕送りや生活費は、基本的に贈与税の対象外です。
例えば、夫から妻に今月の食費代を渡したり、子に参考書の購入費を渡したりする行為は、税法上、贈与税が発生しないと考えられます。なぜなら、これらの支援が「扶養義務者間で必要な範囲内」の支出として認められるからです。
ただし、社会通念上適当と認められる範囲を超え、余剰分を貯金や投資に回す場合、贈与税が発生する可能性があります。この場合、税務署がそのお金を「贈与」と判断することがあるため、生活費や教育費として使ったことを証明できるように、送金の記録や使途明細をしっかり保管しておくことが重要です。
また、30歳未満の子や孫が受け取る場合、親や祖父母から最大1,500万円までの教育資金を非課税で受け取れる「教育資金一括贈与の特例」を利用できます。特例を活用することで、教育資金の負担を軽減し、贈与税を回避できるでしょう。
参照:国税庁|No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(外部リンク)
住宅購入資金
親から住宅購入資金を借りる場合、一定の条件を満たすことで贈与税が非課税となります。具体的には、省エネ住宅などであれば最大1,000万円、一般的な住宅購入資金の場合は最大500万円まで非課税で贈与を受けることが可能です。
ただし、住宅取得資金贈与の特例を適用するには、直系尊属(親や祖父母)からの贈与でなくてはいけません。例えば、夫婦それぞれが実親から贈与を受ければ、2,000万円の非課税限度額を活用できます。一方、義両親からの贈与は適用されないため、注意が必要です。
なお、住宅取得資金贈与の特例はこれまで何度も改正や延長が行われており、今後も継続されるかどうかは不明です。最新の情報については、国税庁の公式サイトで確認することをおすすめします。
参照:国税庁|No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(外部リンク)
結婚式費用
直系尊属(親や祖父母)からの結婚資金の贈与については、300万円(※)まで非課税となる特例があります。「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」として、平成27年4月1日から令和9年3月31日までの期間で、18歳以上50歳未満の受贈者が対象です。
また、特例を利用するには一定の手続きが必要であり、使い切れなかった部分には贈与税が課税されるため注意が必要です。
※特例の非課税枠は最大1,000万円ですが、結婚関連の費用についてはその枠内の300万円が上限
参照:国税庁|父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし(外部リンク)
車は贈与とみなされる可能性がある
親からの贈与で車を購入する場合、110万円を超える金額に対しては贈与税が課せられる可能性があります。ただし、車がないと会社や学校に通えないなど、必要不可欠な理由が認められれば、免除になる場合があります。とはいえ、贈与税の非課税範囲は「生活に必要な範囲」に限られているため、あまりにも高級すぎる車や贅沢品と見なされるものは避けるようにしましょう。
親からの借金が贈与とみなされないためには
親からの借金が贈与とみなされないためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
● 借用書を作成する
● 贈与税の基礎控除110万円を超えない
それぞれを詳しく見ていきましょう。
借用書を作成する
親からお金を借りたつもりでも、借用書を交わしていなければ、税務署から「贈与」と判断されてしまう可能性があります。リスクを避けるには、金銭のやりとりが贈与ではなく貸付金と証明できるよう、以下の点を明記した契約書を作成することが大切です。
✓ 返済期限を定める
✓ 利息を設定する
✓ 署名・押印する
特に注意したいのが「利息」の設定です。家族間ではつい無利子にしがちですが、利息相当分が贈与とみなされ、課税されるケースもあります。また、「出世払い」や「返済時期未定」といった曖昧な表現も、贈与と判断されるリスクを高めるため注意しましょう。
なお、お金の貸し借りを証明する書類は、主に以下の2つがあります。
✓ 借用書:個人間の貸し借りで使用。1通作成し、借主が署名・押印、貸主が保管。
✓ 金銭消費貸借契約書:銀行や企業などの間で利用される形式。2通作成し、双方が署名・押印し、それぞれが保管
書き方に誤りがあったり、必要な項目が抜けていたりすると、契約書としての効力を失ってしまう恐れがあります。借用書のテンプレートなどを確認し、法的に有効な内容で正しく作成しましょう。
贈与税の基礎控除額110万円を超えない
贈与税には「基礎控除」があるため、1年間の合計が110万円以内であれば、税金はかかりません。例えば、一度に500万円を受け取ると贈与税の対象ですが、毎年100万円ずつ5年に分けてもらえば、非課税となります。
ただし、親が亡くなる前7年以内に受け取ったお金は、相続財産に加算されて相続税がかかる可能性もあります。また、毎年同じ金額を継続して受け取っていると、「定期贈与」とみなされて課税されるリスクもあるため注意が必要です。
暦年贈与のやり方について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】暦年贈与とは|相続税対策で押さえるべき3つの注意点と廃止リスク
親から借りたお金を返す方法
親からの借入れであっても、返済は銀行振込を基本とすることが望ましいです。その理由は明確で、振込記録が「返済の事実」を証明する確かな証拠になるからです。
一方、現金で手渡ししてしまうと記録が残らず、「贈与だった」と税務署に判断されるリスクが生じます。返済の履歴が確認できない場合は、「形式だけの貸付」とみなされ、贈与税の対象になるおそれがあります。リスクを回避するためにも、契約書を作成し、返済条件や振込先を明記したうえで、両親名義の口座へ振り込むようにしましょう。
なお、借用書がない場合でも返済の意思と実績が確認できれば契約としては成立しますが、書面があればトラブル時にも明確な根拠となり、信頼性が高まります。
親から借金、返済前に死亡したら誰に返すのか
親が亡くなっても、借金が帳消しになるとは限りません。借りていたお金は「相続財産の一部」として扱われ、他の財産と同じように、相続人が返してもらう権利を引き継ぐことになります。つまり、借りていたお金は、今度は他の相続人に返すべき借金になるのです。
ただし、相続の状況によっては、返済が不要になったり、一部だけで済んだりする場合もあります。例えば、相続人が自分一人なら、返す立場と受け取る立場を同時に引き継ぐため、相続税を払ったうえで実質的に相殺されます。一方で、相続人が複数いる場合は、自分の法定相続分に応じた額だけが相殺され、残りは他の相続人に返済する義務が残ります。
なお、相続放棄をした場合は、親の財産や債権を一切引き継がないことになります。お金の権利(債権)は他の相続人に引き継がれるため、引き続き返済する必要があります。
お金を貸した相手が死亡した場合
親からお金を借りた場合とは逆に、子が親にお金を貸している場合も、親の相続財産に含まれます。つまり、親が亡くなった後、子は親に貸したお金を他の相続人に対して返済を請求できます。ただし、他に相続人がいない場合、貸付金を回収する相手がいなくなります。自分に対してお金を返せないため、混同消滅します。
なお、親が友人などにお金を貸していた場合、相続人がいなくても、裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることで回収できる可能性があります。しかし、申立てには費用や時間がかかるため、貸した金額が回収可能かどうかを見極め、費用対効果を踏まえて判断する必要があるでしょう。
親にお金を借りたいけど言いづらいときの上手な伝え方
親にお金を借りたいけど、言いづらくて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、状況を冷静に説明し、誠意を持って伝えることで、理解を得やすくなるはずです。ここでは、親にお金を借りる際の上手な伝え方を紹介します。
お金を借りたい理由を正直に伝える
親にお金を借りる理由は隠さず、正直に伝えましょう。例えば、「急にお金が必要になった」とだけ伝えると、親は何か深刻な問題が起きたのではないかと不安になってしまいます。その結果、助けたい気持ちがあっても、心配が先に立ち、簡単にはお金を出せなくなってしまうかもしれません。
一方で、「車の修理代が急にかかった」「予想外の医療費が必要になった」など、具体的な理由を丁寧に説明すれば、親も事情を理解しやすくなります。内容が明確で納得できるものであれば、親としても安心して支援しやすくなるでしょう。
その際、嘘をつくのは絶対に避けましょう。どんなに親しい間柄でも、曖昧な言い訳や作り話は信用を損ねる原因になります。特に親は、子の様子の変化を敏感に察知するものです。一度信頼を失うと、本当に助けが必要なときに、協力してもらえなくなってしまうかもしれません。
返済計画を立てたうえで、直接会って伝える
お金を借りる話をするなら、まずは「どう返すか」をしっかり考えてから伝えるのが大切です。返済の見通しがあると、親も安心して話を聞いてくれるでしょう。
また、昨今はLINEやメールが主な連絡手段になっていますが、お金の相談に関しては話が別です。どれだけ親しい間柄であっても、メッセージだけで「お金を貸してほしい」と伝えるのは、切実さや誠意が伝わりにくく、不信感を招いてしまうことがあります。どうしても会えない場合は電話でも構いませんが、自分の声で直接伝えることが大切です。
また、返済についても「いずれ返す」ではなく、「毎月いくらずつ返す」「◯月までに完済する」といった具体的なプランを示しましょう。贈与税などのトラブルを避けるためにも、契約書を作成することをおすすめします。
親からお金を借りる場合の注意点
親からお金を借りる際に注意すべきポイントは、以下の2つです。
● 贈与税が未納なままだとペナルティがある
● 親戚からお金を借りた場合、贈与税率が高くなる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
贈与税が未納なままだとペナルティがある
親からお金を借りたつもりでも、実質的に「返済の意思がない」と判断されると、「贈与」と見なされ、贈与税の対象になる可能性があります。「バレないだろう」と考える方もいるかもしれませんが、税務署は親族間のお金のやり取りに敏感です。銀行口座の入出金履歴、住宅購入や車の購入など大きな支出に対して、資金の出どころを調査するため、たとえ隠していたとしても必ず見つかってしまいます。
なお、贈与税の申告・納税期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日です。期限内の申告を怠ると、「加算税」や「延滞税」といったペナルティが課されるため注意しましょう。
ペナルティの詳細について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税の申告漏れ!ペナルティとミスがバレる原因とは
親戚からお金を借りた場合、贈与税率が高くなる
親戚からお金を借りても、110万円以下であれば贈与税はかかりません。しかし、110万円を超える金額を親戚から借りた場合、注意が必要です。
具体的には、18歳以上の子が親からお金を借りる場合は「特例贈与」に区分され、贈与税が優遇されます。一方、親戚(直系尊属以外の親族)からお金を借りる場合は「一般贈与」に該当し、贈与税の税率が高くなります。そのため、高額なお金を借りる必要がある場合は、親から借りる方が税負担を避けやすくなります。
まとめ
お金をもらう側としては、「贈与」と「借入」の違いや、それぞれの制度をよく理解し、税金のリスクを避けつつうまく活用することが大切です。「贈与税の非課税枠を使うか」「借用書を交わして借金とするか」「相続時精算課税を選ぶか」など、目的や金額、将来の相続まで見据えて、適切な方法を選びましょう。なお、住宅資金や結婚資金、教育資金に関しては、特例を利用することで一定金額まで贈与税をかけずにお金を受け取ることが可能です。特例が適用できるかどうかは、相続専門の税理士に早めに相談することをおすすめします。
最後に
相続税の申告手続きは、相続税のクロスティにお任せください
私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。
相続税は税理士にとっても特殊な分野の税目です。相続税の高度な知識だけでなく、民法や都市計画法など幅広い知識が必要な他、年月をかけ培った経験やノウハウが大変重要になる分野です。税額を安くする制度は多数ありますが、その選び方ひとつで大きくお客様の納税負担は変わります。
故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでもお守りすべく、私たち相続税のクロスティは各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携し、お客様におすすめの制度と対策をご提案させていただいております。私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。「相続の仕組みを知りたい」「相続税申告が必要かわからない」「まずは見積りだけほしい」など、まずはどんなことでもお気軽にご相談ください。ぜひ、お会いできる日を楽しみにしております。
初回の無料相談は「ご来社による相談」「オンラインツールを使った相談」が可能です。名古屋に限らず日本全国の相続のご相談に対応いたします。
ご来社いただく場合、本社(名古屋市中区栄)または池下駅前本部(名古屋市千種区池下)のいずれかにてご対応させていただきます。
電話でのお問い合わせは24時間受け付けております。ぜひお気軽にご相談ください。
「個別説明会」開催のご案内 相続のことは実績と経験が豊富な相続税専門の税理士にご相談を。
運営:名古屋総合税理士法人
(所属税理士会:名古屋税理士会 法人番号2634)