相続税の税務調査はいくらから対象になる?対象になる金額や時期を解説

大切な親族の亡き後、相続手続きがようやく落ち着いたと思った矢先、税務署からの調査通知が届いた…。そんな事態に直面しないためには、相続税における税務調査の実態をしっかり理解しておくことが重要です。実際、相続税の税務調査は高額な財産がある場合に限らず、一般家庭でも対象となる可能性があります。
本記事では、相続税における税務調査の基準や選ばれやすいケースについて分かりやすく解説します。名古屋を中心に税務調査の実情についてもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
・相続財産が少額でも相続税の税務調査は起こり得る
・そもそも相続税の税務調査とは
・税務調査に選ばれやすい人
・相続税の税務調査ではどこまで調べられるのか
・名古屋で相続税の税務調査が来る確率
・まとめ
相続財産が少額でも相続税の税務調査は起こり得る
相続税は、相続財産が基礎控除額である3,600万円を超えると支払う義務が発生します。しかし、税務調査は財産の額だけで決まるわけではありません。たとえ相続財産が少なくても、申告内容に不自然な点や疑わしい取引があると、税務署が調査に入る可能性があります。
例えば、生前に多額の現金が引き出されている場合や、名義預金の疑いがある場合などは、特に注意が必要です。相続税の申告をする際は、財産の種類や過去の取引をしっかり確認し、適切に申告することが大切です。
相続税がいくらからかかるのか振り返りたい方は、以下の記事をあわせてご確認ください。
【関連記事】相続税はいくらからかかる?妻・親子別の無税ラインと申告基準を解説
そもそも相続税の税務調査とは
相続税の税務調査は、相続した財産が適切に申告されているかチェックするために行われます。調査の方法は、主に以下の2つです。
● 簡易接触
● 実地調査
簡易接触とは、税務署から電話や手紙で、申告内容に誤りがないか確認される方法です。一方、実地調査は申告漏れや未申告が疑われる場合に行われます。いずれの調査でも、相続税の申告が正しく行われているか確認するため、必要な書類や証拠をしっかり準備しておくことが大切です。
税務調査では過去何年分までさかのぼるのか
相続税の税務調査は、基本的に申告書の提出期限から5年間が対象です。ただし、申告内容に重大な誤りや虚偽があった場合、調査の対象期間が7年に延長されます。不適切な点があれば過去の申告内容を再評価、適正な税額を再計算することになります。
相続税の時効について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。【関連記事】相続税の時効は5年もしくは7年?起算日や納められない場合の対処法
相続税の税務調査はいつ頃来るのか
税務調査の実施時期に関する明確な決まりはありませんが、8月から11月にかけて行われる傾向にあります。その理由は、毎年7月に税務署の職員が異動することにあります。新しい担当者が就任後、自分の担当する案件の調査を始めるため、8月から調査が本格的にスタートするのが一般的です。そのため、8月から11月の間に税務署から連絡が来る可能性が高いと言えるでしょう。
相続税の申告が不要でも税務調査が入る可能性がある
相続税が発生しないと思われる場合でも、税務署の調査を完全に避けることはできません。例えば、相続人が遺産の金額を確認して、相続税がかからない範囲内だと思っても、税務署は自分たちが持っている情報を基に調査を行うことがあります。そのため、調査がいつ来ても慌てないように、事前に必要書類を整理しておくことが大切です。
税務調査に選ばれやすい人
相続税の税務調査は、誰でも対象になる可能性があります。特に、以下のようなケースに当てはまる人は、税務署から調査される確率が高くなります。
● 相続財産が多い人
● 申告書にミスがある人
● 相続税の申告が必要なのに、無申告の人
● 生前贈与が多い人
● 海外資産がある人
● 税理士に頼まず自分で申告した人
もし税務調査で申告漏れを指摘されると本来の税金に加え、加算税や延滞税といったペナルティが発生します。余分な負担を避けるためにも、税理士など相続に詳しい専門家に相談し、適切な手続きを進めることをおすすめします。
なお、相続税の申告漏れによるペナルティの詳細について詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
【関連記事】相続税の申告漏れ!ペナルティとミスがバレる原因とは
相続財産が多い人
相続財産の総額が多いと、税務調査の対象になりやすくなります。なぜなら、財産が多いほど相続税の計算が複雑になり、ミスや記入漏れが生じる可能性が高くなるためです。税務署としても、財産の大きい申告を調査するほうが、誤りを見つけやすく、効率的に税収を確保できるため、優先的に調査対象とする傾向があります。
申告書にミスがある人
相続税の申告書に記入漏れや誤りがあると、税務調査が入る可能性が高くなります。税務署は提出された申告書を機械でスキャンし、計算ミスや記入ミスがないか自動的にチェックします。もし申告書に間違いや不足があれば、その内容が疑問視され、調査が行われる可能性が高くなるでしょう。
相続税の申告が必要なのに、無申告の人
相続税の申告義務があるのに申告しないと、税務署から連絡が来る可能性が高まります。税務署は、死亡届や銀行口座の情報を元に、相続人に相続税の申告義務があるかを確認しています。つまり、無申告の場合でも税務署は相続財産を把握できるので、税金逃れはできません。そのため、相続税の申告が必要な場合には、必ず期限内に申告を行うことが大切です。
生前贈与が多い人
亡くなった方から、生前に多くの財産を受け取っている人は、相続税の税務調査に選ばれやすくなります。
贈与税には、暦年課税と相続時精算課税という2つの方法があります。暦年贈与は、年間110万円までは贈与税がかからないため、相続対策としてよく利用されます。しかし、相続が発生した7年前までに贈与された財産は、相続税の課税対象として加算されます。また、贈与に関しては、不明な出金履歴や、生活費を超える大きな金額の出金があった場合、隠し財産や不正な資産移動が疑われ、税務調査を受けるリスクが高くなります。
暦年贈与の詳細について振り返りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
【関連記事】暦年贈与とは|相続税対策で押さえるべき3つの注意点と廃止リスク
海外資産がある人
近年、相続対策や資産分散の目的で海外に不動産や金融資産を持つ人が増えています。それに伴い、税務署も海外資産の申告漏れを厳しくチェックするようになっています。
特に、海外に多くの資産があると、相続人がその全てを正確に把握しづらく、申告漏れが発生しやすい傾向があります。また、一部では「海外資産なら税務署に知られないだろう」と考え、意図的に申告しないケースも見られます。しかし、税務署は、国際的な情報共有制度(CRS:共通報告基準)を活用し、各国の税務当局と連携して海外資産の情報を把握しています。海外に資産を持っている場合は、「バレないだろう」と安易に考えず、適正に申告することが重要です。
税理士に頼まず自分で申告した人
相続税の申告では、財産の種類ごとに評価方法が異なり、特例の適用要件なども細かく定められています。そのため、税理士に相談せずに申告を行うと、財産評価や税額計算のミスが起こりやすくなります。
一方、税理士に依頼すると、専門的な知識を活かして正確な申告が可能です。特に、税理士が計算根拠を明記する「書面添付制度」を利用することで、申告の正確性が証明できます。この場合、税務署は事前に税理士に意見聴取を行うため、疑義が解消されれば実地調査を回避できる可能性があります。税務調査のリスクを抑え、余計な手間を避けるためにも、税理士のサポートを受けながら申告することをおすすめします。
相続税に強い税理士の選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税申告は税理士の選び方が重要!依頼先を決める際の9つのポイントとは
相続税の税務調査ではどこまで調べられるのか
相続税の税務調査では、亡くなった方の預金口座を中心に、財産の流れや申告漏れがないか細かくチェックします。具体的には、調査官はすでに把握している情報をもとに、以下の項目を調査します。
● 預金通帳の動き
● 遺言書や財産リスト
● 金融機関関連の品物(カレンダー・タオルなど)
● 自宅の金庫や貸金庫
● 高価な動産(骨董品・絵画など)
● 印鑑の使用状況
● ゴルフのトロフィーや会員証
● 日記・手帳・電話帳 など
さらに、調査は亡くなった方だけでなく、相続人やその親族の口座にも及びます。例えば、相続人や家族の口座に亡くなった方からの入金履歴があると、「贈与」と見なされ、相続税の課税対象になる可能性があります。税務調査で指摘を受ける前に、預金口座や財産の流れを整理し、正しく申告しておくことが大切です。
税務調査の詳しい流れについては、以下の記事もあわせてご確認ください。
【関連記事】相続税の税務調査と流れの実態。事前準備や税務調査を受けにくい申告書とは?
名古屋で相続税の税務調査が来る確率
名古屋で相続税の税務調査が行われる確率は、全国とほぼ変わりません。具体的な確率は以下の通りです。
全国における相続税税務調査の確率
● 令和5年分の相続税の申告件数:193,861件
● 税務調査の件数:27,337件(実地調査8,556件+簡易調査18,781件)
● 税務調査の確率:約14%(10人に1~2人)
名古屋における相続税税務調査の確率
● 令和5年分の相続税の申告件数:27,256件
● 税務調査の件数:3,644件(実地調査1,301件+簡易調査2,343件)
● 税務調査の確率:約13%(10人に1~2人)
どちらもおおよそ10人に1〜2人が税務調査を受ける確率となっています。
参照:
国税庁|令和5分相続税の申告実績の概要(外部リンク)
国税庁|令和5事務年度における相続税の調査等の状況(外部リンク)
名古屋の相続には特有のリスクがある
名古屋では以下のような特性により、税務調査で問題になりやすいケースが多いと考えられます。
✓ 資産家が多い地域である
✓ 不動産の評価が高額になりやすい など
名古屋は、企業経営者や事業承継を行う資産家が多い地域です。特に、地元企業のオーナー経営者や、代々資産を受け継いできた家庭では、多額の金融資産や不動産が相続の対象となるケースも少なくありません。税務署は、財産の多い相続ほど申告漏れのリスクが高いと考えるため、高額な相続が発生した場合は調査対象になりやすい傾向があります。
また、名古屋市内は地価が高く、不動産の相続税評価額が高額になりやすい地域です。不動産の評価は計算方法によって評価額が変動するため、申告ミスが発生しやすく、税務署が注目しやすいポイントとなります。
名古屋での相続税申告は専門家のサポートが必須
税務調査の確率は全国と同じでも、名古屋特有のリスクを考えると、申告の段階で適切な対策を講じることが重要です。
✓ 財産の評価を適切に行う(特に不動産評価は慎重に)
✓ 申告漏れがないよう、預貯金や有価証券などの財産を正確に申告する
✓ 専門家のチェックを受けて、税務調査に備える など
税務調査が入ると、調査官とのやりとりや追加の資料提出など、大きな負担がかかります。税務署に指摘されるリスクを抑えるためにも、名古屋における相続特有のリスクを考慮し、正確な申告を行うことが大切です。
なお、相続税のクロスティは、昭和47年創業の相続税専門の税理士事務所として、累計800件以上の申告実績を誇ります。豊富な経験と専門知識で、スムーズかつ正確な申告をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
相続税の税務調査には、「財産が○○円以上なら対象」といった明確な基準はありません。申告内容に不審な点があれば、どんな人でも調査の対象になり得ます。また、申告漏れや計算ミスが見つかると、本来の税金に加えて、追加の税金やペナルティを支払わなければなりません。余計な負担を避けるためには、財産を正確に把握し、適切な申告を行うことが重要です。なお、相続税の申告や税務調査に不安がある方は、相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、税務調査のリスクを大幅に抑えられるでしょう。
最後に
相続税の申告手続きは、相続税のクロスティにお任せください
私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。
相続税は税理士にとっても特殊な分野の税目です。相続税の高度な知識だけでなく、民法や都市計画法など幅広い知識が必要な他、年月をかけ培った経験やノウハウが大変重要になる分野です。税額を安くする制度は多数ありますが、その選び方ひとつで大きくお客様の納税負担は変わります。
故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでもお守りすべく、私たち相続税のクロスティは各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携し、お客様におすすめの制度と対策をご提案させていただいております。私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。「相続の仕組みを知りたい」「相続税申告が必要かわからない」「まずは見積りだけほしい」など、まずはどんなことでもお気軽にご相談ください。ぜひ、お会いできる日を楽しみにしております。
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