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借地権割合の相続税評価額の調べ方|計算方法やトラブル例を解説

相続税の計算では、目に見えない財産も正確に評価することが求められます。例えば、借りた土地に建物を建てている場合、土地を使用する権利である借地権も相続税の課税対象です。同様に、自分の土地を他人に貸していても、自用地評価額から借地権相当額を差し引いた金額が課税対象になります。本記事では、借地権の概要をはじめ、借地権を評価する借地権割合について詳しく解説します。相続税の計算で借地権割合をどう使用するのかも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次
借地権の基礎知識
借地権割合とは
借地権割合の愛知県イメージ
相続税評価で借地権割合が必要な3つのケースと評価方法
借地権割合を調べる手順
相続における借地権割合のトラブルには注意
まとめ

借地権の基礎知識

借地権は、土地を借りてその上に建物を建てる権利を指します。借地権があるかどうかは、以下の3つで総合的に判断します。

賃貸契約の内容
賃料
権利金の有無 など

例えば、土地を借りて自宅を建てたとしましょう。この場合、土地には借地権が設定されています。相続の際には借地権も財産の一部として評価され、相続税が課されます。ただし、土地を無償で借りている場合(使用貸借)は借地権がないとみなされるため、借地権評価額を算出する必要はありません。そのため、青空駐車場のように建物を建てる目的がない場合には、借地権は発生しません。

借地権と底地権の違い

借地権とは、他人の土地に家や施設を建てた人が持つ権利です。自分で土地を所有している場合は所有権を持ちますが、他人の土地に建物を建てた場合は借地権しか持っていません。一方、底地権とは、自分の土地を他人に貸している地主が持つ権利です。つまり、借地権が設定されている土地には、借主が持つ借地権と貸主が持つ底地権の両方が存在します。重要なのは、土地の使用権を持つ借地権者と、土地の実際の所有者である地主との関係を分けて考えることです。

借地権の種類

借地権は、契約の期間や使用目的に応じて、大きく以下の3つに分類されます。

旧借地権
普通借地権
定期借地権

旧借地権とは

1921年に制定された借地法に基づく借地権を指します。借地上に建物が存在する限り、借地契約は自動的に更新され、借地人は土地をほぼ永久的に利用することが可能です。

普通借地権とは

土地を借りる契約が更新できる借地権です。借地借家法によって保護されており、借主の権利が非常に強いことが特徴です。例えば、最初に契約した期間が終了しても、借主の希望により契約を延長できます。

定期借地権

契約期間が決まっています。例えば、土地を30年間借りる契約を結んでいた場合、期間が終了すると必ず土地を所有者に返還しなくてはいけません。

このように、それぞれ借主と土地所有者の権利や特徴が異なります。

借地権割合とは

借地権割合とは、人から借りた土地に家や施設を建てる権利(借地権)が、その土地全体の権利の中でどれだけの割合を占めるかを示す数字です。例えば、親が利用していた借地を子が相続する場合、借地の価値を正確に評価するために、借地権割合が使われます。なお、借地権割合が必要な理由は、借地借家法により借地権が売買や譲渡可能な財産とされているからです。所有する割合に基づいて相続や譲渡時の税額を決定することで、地主と借地人の双方に公平な税負担を確保できます。

不動産を相続した時に発生する税金について振り返りたい方は、相続コラム「不動産の相続でかかる税金とは|相続時、所有時、売却時の税金を解説」もぜひ参考にしてください。

借地権割合が必要な場面

借地権割合は、以下の3つの場面で必要です。

相続発生時
地代設定時
借地権売却時 など

相続発生時には、不動産の所有権と借地権の分離状況の割合が相続財産の評価に反映されます。しかし、地代設定時や借地権売却時においては、不動産市場の状況や交渉の結果によって、必ずしも借地権割合どおりに価格が設定されるわけではありません。そのため、相続税評価と売却価格との間には差異が生じることがあり、それを理解した上で不動産の取引や相続計画を進めることが重要です。

借地権割合の愛知県イメージ

借地権割合は、土地の利用価値によって下表のように異なります。

しかし、数字だけで見てもイメージがわかないという方も多いでしょう。ここでは、愛知県を例に挙げて説明します。

名古屋市内のケース

名古屋市の栄周辺や名駅など繁華街のように土地の利用価値が高い地域では、70〜60%と割合が高くなります。一方、北区や南区など、名古屋市と境目にある区では50%と割合が低くなります。また、都心の商業エリアなどでは、借地権割合が90%になるケースも少なくありません。

名古屋市以外のケース

名古屋市以外の愛知県では、土地の価値が名駅や栄などの中心地と比べて低いため、借地権の割合も低くなります。そのため、路線価・倍率ともに50%に設定されているケースが多い傾向にあります。また、郊外の建物が少ない地域では、借地権割合が定められていないケースも少なくありません。権利金などの名称をもって取引される慣行のない地域においては、たとえ借地であっても借家権の価額で評価は行われません。

相続税評価で借地権割合が必要な3つのケースと評価方法

相続税評価で借地権割合が必要なケースは、以下の3つです。

借地権
貸宅地
貸家建付地

それぞれを詳しく見ていきましょう。

相続した土地に活用できる減額制度については、相続コラム「土地評価額の減額制度とは|計算方法や節税ポイントを解説」をご確認ください。

借地権

借地権は、先に解説したとおり土地の使用者と所有者が異なる場合に発生します。建物を建てるために土地を借りていれば、相続税の課税対象です。なお、借地権の相続税評価額は、路線価図に借地権割合を表記している記号があるかどうかで、相続税評価方法は異なります。

土地評価方法については、相続コラム「相続税の土地評価方法とは!活用できるWebサイト5選」をご確認ください。

路線価図に記号がある地域

路線価図に記号がある地域では、路線価方式を用いて借地権割合を確認します。路線価方式を利用して借地権割合を算出する手順は次のとおりです。

路線価図を確認する
土地の面積を把握する
借地権価格を算出する

例えば、路線価が「4,500B」で、面積が100㎡の場合、以下のように計算されます。

相続税評価額 = 450万円 × 80% × 100㎡ = 3,600万円

路線価図に記号がない地域

路線価図に記号がない地域では、土地の利用状況や立地条件などを反映した倍率が記載されている「評価倍率表」を使って土地の価値を確認します。倍率方式を用いて借地権割合を計算する手順は以下のとおりです。

評価倍率表を確認する
土地の面積を把握する
借地権価格を算出する

例えば、固定資産税評価額が4,000万円で、倍率が1.2の場合、下表のように計算されます。

相続税評価額 = 4,000万円 × 1.2 = 4,800万円

倍率方式は、路線価が設定されていない地域でよく使用される方法です。ただし、評価倍率表はあくまで目安であり、実際の借地権割合は土地の状態や周辺の環境などを考慮して判断する必要があります。

評価倍率表については、相続コラム「路線価がない地域の不動産評価方法|評価倍率表の見方や評価の流れ」をぜひ参考にしてください。

貸付地

貸宅地とは、土地の所有者が自分の土地を他人に貸し出し、その土地に借地権が設定されている場合の底地を指します。土地を第三者に貸し、その上に建物を建てさせている場合に貸宅地として評価されます。貸宅地の評価方法は、下表のとおりです。

自用地評価額 -(1 - 借地権割合)

例えば、自用地評価額が3,000万円で借地権割合が60%の場合、3,000万円 ×(1 - 60%)= 1,200万円です。

貸家建付地

貸家建付地とは、土地所有者がその土地に賃貸物件を建て、他人に貸している土地を指します。一般的に、賃貸マンションや賃貸アパートの敷地が該当します。貸家建付地の評価方法は、下表のとおりです。

自用地評価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

貸家建付地は、借家人に借家権があるため、借地権割合と借家権割合を用いて評価額を減らします。借家権割合は建物を借りている人の権利の割合を指し、全国一律で30%と定められています。賃貸割合は、貸家の部屋数が複数ある場合に、相続開始時点で賃貸されている部分の割合です。例えば、10室あるアパートの1室を所有者が物置として使用している場合、賃貸割合は90%です。短期間の空室は賃貸されているものとして計算に入れます。例えば、上記の例で自用地評価額4,000万円、借地権割合が50%の計算式は、以下のとおりです。

4,000万円 -(4,000万円 × 30% × 50% × 90%)= 3,460万円

なお、3,460万円は土地に関する評価だけです。アパートを所有している場合、建物も相続財産として評価しなくてはいけません。

借地権割合を調べる手順

借地権割合を調べる手順は、以下の4ステップです。

1. 国税庁の「財産評価基準書」にアクセス
2. 対象となる土地の所在地を検索
3. 検索結果の路線価図で、借地権割合を確認

借地権割合は、土地の利用権に関する重要な指標であり、国税庁が地域ごとに定めています。定期的に見直されるため、最新の情報は国税庁の公式ウェブサイトで確認することが重要です。なお、地域や借地権の種類により、借地権割合は異なります。借地権の種類や倍率地域、路線価地域など、正確な情報を調べることが大切です。

相続における借地権割合のトラブルには注意

借地権割合をめぐり、地主や相続人間で以下のトラブルが発生する可能性があります。

借地権の返却を求められる
複数人の借地権者が存在する

トラブルが発生した場合は、相続や借地権に精通した税理士などの専門家に相談することをおすすめします。それぞれを詳しく見ていきましょう。

相続に精通した税理士の選び方について詳しく知りたい方は、相続コラム「相続税申告は税理士の選び方が重要!依頼先を決める際の9つのポイントとは」もあわせてチェックしてみてください。

借地権の返却を求められる

借地権は財産に該当するため、親が亡くなった際に子に相続されます。譲渡とは異なり、借地を第三者に貸し出したり譲渡したりするわけではないので、地主の許可は必要ありません。ただし、借地人が変わることになるため、地主によっては借地権の解除や譲渡承諾料の支払いを求める場合があります。なお、相続において借地の返却や譲渡承諾料の支払いを拒否しても問題ありませんが、地主との関係が悪化し、住みづらくなる可能性もあります。そのため、トラブルを避けるためには、相続の旨を地主に伝えたり、譲渡承諾料の支払いを検討したりすることが大切です。

複数人の借地権者が存在する

民法第898条では「相続人が複数いる場合、相続財産は共有になる」と規定されています。そのため、借地権を相続する際にも、共有名義にすることが可能です。しかし、借地権を共有名義にすると、将来的にトラブルが生じる可能性があります。例えば、借地権の売却や建物の建て替えの際に、相続人全員の意見が一致しないと、利用方法の決定が難しくなるケースも考えられます。そのため、可能であれば借地権を単独名義にするなど、将来的な利用を見据えて対応することで、トラブルを避けられるでしょう。

共有財産に関するトラブルについて詳しく知りたい方は、相続コラム「相続における共有財産とは|手続きの難しさやメリット・デメリットを解説」もぜひ参考にしてください。

まとめ

借地権割合は不動産評価において重要な要素の一つです。借地権の存在や割合を正確に把握しておかないと、相続時に予期せぬ高額な相続税が発生する可能性があります。事前に適切な評価と準備を行っておくことで、相続が発生した際や不動産の売却を検討する際に、スムーズに対応できるでしょう。なお、相続税のクロスティでは、相続に関する節税方法や申告の秘訣を余すことなくお伝えする相続セミナーを定期的に開催しています。ブログでは公開しきれない「ココだけの話」を、参加者限定で提供しております。あなたの相続計画に役立つ最新情報を、ぜひ手に入れてください。

最後に

相続税の申告手続きは、相続税のクロスティにお任せください

私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。

相続税は税理士にとっても特殊な分野の税目です。相続税の高度な知識だけでなく、民法や都市計画法など幅広い知識が必要な他、年月をかけ培った経験やノウハウが大変重要になる分野です。税額を安くする制度は多数ありますが、その選び方ひとつで大きくお客様の納税負担は変わります。
故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでもお守りすべく、私たち相続税のクロスティは各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携し、お客様におすすめの制度と対策をご提案させていただいております。私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。「相続の仕組みを知りたい」「相続税申告が必要かわからない」「まずは見積りだけほしい」など、まずはどんなことでもお気軽にご相談ください。ぜひ、お会いできる日を楽しみにしております。

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