相続人に認知症の人がいる場合や亡くなった方が認知症だった場合の相続
今回の内容はvol.170「相続人に認知症の人がいる場合や亡くなった方が認知症だった場合の相続」です。
相続税は難しい言葉が多く、内容も複雑です。「相続マメ知識」は、そんな複雑で難しい相続税の知識を毎日少しずつ学べるよう1つ5分程度で読める内容にまとめたものです。これから相続について知りたいと思っている初心者から税理士試験受験者、税理士事務所や会計事務所の職員まで、まずは軽い気持ちで読み進めてください。
もっと詳しく知りたいと思われましたら過去の「相続マメ知識」や、更に詳しく解説した「ブログ」も見てみてください。
相続が発生した時、相続人の中に認知症の人がいたり、亡くなった被相続人が認知症であったという場合があります。その場合の遺産分割協議はどのように行えばいいのでしょうか?
相続人に認知症の人がいる場合
相続人の中に認知症の人や、寝たきりで判断能力が難しくなっている方がいる場合は、早いうちから相続対策をする必要があります。相続が発生すると、亡くなった方の財産は凍結されます。原則、銀行での預金の引き出しはできませんし、不動産の処分もできません。凍結解除するためには、遺産分割協議を行い「誰が何を相続するのか」を確定させる必要があります。しかし、遺産分割協議は相続人全員が合意する必要があります。その際、相続人のうち1人でも認知症で判断能力が低下している場合、遺産分割協議を行うことができません。
成年後見制度
成年後見制度とは、認知症や知的障がいなどの精神疾患が原因で自己判断能力が低下した人の財産を保護するために設けられた制度です。認知症などで自身の財産管理が難しくなった人の代わりに後見人という役割の人を置き、後見人が財産管理や重要な契約を行います。預貯金は後見人の口座に移して管理し、介護の契約などの法律行為も後見人が代理人として行います。そして、後見人が本人の代理人として遺産分割協議にも参加することができます。
成年後見制度のデメリット
① 成年後見人を誰にするかの決定権は家庭裁判所が持っていて、親族ではなく専門家が選ばれることが増えてきています。後見人に専門家が選ばれた場合、財産管理や介護施設への入所など専門家後見人と話し合って決める必要があります。
② 後見人に報酬が発生します。最低月2万円、保有する財産の額によっては月5~6万円支払うこともあります。後見制度は原則途中でやめることはできないので、亡くなるまでずっと後見人が就き、報酬も発生します。
③ 相続人の意図通りの遺産分割になるとは限りません。後見人の使命は「財産や権利を守ること」なので、遺産分割協議は行えますが、必ずしも相続人の思い通りの遺産分割協議を行うことはできません。
解決方法
生前に遺言書を作成しておくことが一番重要な対策となります。遺言で「誰に何を相続させるか」を決めておけば遺産分割協議をしなくても不動産や預貯金について凍結を解除し相続手続きを行うことができます。また、家族信託をしておき、承継先を決めておくことも対策の1つです。このように、認知症と診断されている相続人がいる場合は、遺産分割協議をしなくても済むような対策をとることをオススメします。
亡くなった人が認知症だった場合
相続人同士が不仲だと、遺言が残っていても納得いかなかった相続人に「遺言を作成した時には認知症と診断されていて、遺言を作成する能力がなかった。なのでその遺言は無効だ。」と主張してくる可能性があります。遺言が無効になってしまうと、相続人同士での遺産分割協議が必要になります。折り合いがつかず合意が取れない場合は裁判所での調停に進み、泥沼化していく危険があります。そのため、遺言は元気なうちに作っておくことが大切です。もし、高齢になってから、または物忘れが出てきてから遺言を作る場合は、医師に遺言などを作る意思能力があることを証明する診断書をもらっておくと安心です。
もうすでに相続が始まっている場合、どう進めればよいか
遺言書など生前対策をお伝えしましたが、すでに相続が始まっている場合には、以下のポイントを確認し、対策を取ります。
相続人の認知症レベル、意思能力のレベルをチェックする。
認知症と診断されていたとしても、判断能力の有無についての判断は別物です。認知症がごく軽度であれば自身で遺産分割協議に参加することも可能であり、後見人の利用も不要となる場合があります。その判断は医師が行います。遺産分割協議ができる意思能力レベルかどうか診断書をもらっておくと安心です。
生命保険の有無をチェックする。
生命保険の死亡保険金は遺産分割協議をせず受取人が受け取れる財産です。相続が発生したとき、残された相続人には金銭的負担が生じます。相続人の中に認知症の方がいることで遺産分割協議がスムーズに進まない場合でも、生命保険金の受取人が認知症の方以外の場合、葬儀費用など金銭的負担が軽減されます。
受取人が認知症の方である場合には、保険金を受け取るためには成年後見制度の利用が必要になる可能性があります。
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最後に
認知症には軽度のものから重度のものまで様々です。判断能力の有無を問われることも考慮し、医師に診断書をもらっておく、元気なうちに遺言書を作成しておくなど、早めの対策をとっておくことが大切です。私たち、相続税のクロスティは、相続税を専門として取り扱っております。各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携しております。遺言書についても、書き方など困ったことがあればいつでもご相談ください。故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでもお守りすべく、私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。お会いできる日を心よりお待ちしています。
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