相続人と連絡が取れない!ケース別の対処法や放置するリスクを解説

家族が亡くなり、悲しみの中で始まる相続手続き。しかし、その過程で「連絡が取れない相続人」がいると、スムーズに進むはずだった手続きが思わぬトラブルに発展することもあります。「住所がわからない」「何度連絡しても応答がない」といったケースでは、他の相続人がどんなに努力しても相続手続きが止まってしまいます。相続税の申告は10ヶ月以内と期限が設けられているため、出来る限り迅速に相続人と話し合うことが重要です。本記事では、連絡が取れない相続人にどう対処すべきか、具体的な解決策をわかりやすく解説します。相続手続きを放置するリスクも紹介するので、スムーズに手続きを進めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
・1人でも連絡が取れない相続人がいると、相続手続きが進まない
・居場所の分からない相続人の探し方
・相続人が連絡を無視する場合の対処法
・相続人が行方不明の場合の対処法
・相続手続きを放置する4つのリスク
・まとめ
1人でも連絡が取れない相続人がいると、相続手続きが進まない
相続手続きでは、遺産をどう分配するかを相続人全員で協議し、全員の同意を得る必要があります。連絡が取れない相続人がいると、遺産分割協議が進まず、相続手続きが止まってしまいます。また、すべての相続人がそろっていない状態で手続きを進めると、せっかく話し合った遺産分割の合意は無効となってしまいます。手続きが遅れるだけでなく、後々のトラブルにもつながる可能性があるため、慎重な対応が必要です。
相続手続きの基本的な流れ
相続手続きの、主なステップは以下の通りです。
1. 遺言書の確認
2. 相続人の確定
3. 相続財産の特定
4. 遺産分割協議の実施
5. 相続方法の選択
6. 相続税の申告・納付
7. 名義変更などの手続き
相続手続きは、故人の遺産を相続人が受け継ぐための重要な作業です。通常の相続手続きでは、相続人全員が協議に参加し、合意に至ることが求められます。しかし、相続人と連絡が取れない場合は、通常の流れとは異なる特別な手続きが必要です。相続手続きは複雑な法律的要素を含むため、不安がある方は専門家に相談することをおすすめします。相続税のクロスティでは、各専門家と連携し、スムーズな相続手続きができるようサポートいたします。相続に関する悩みや疑問がある方は、お気軽にご相談ください。
なお、相続手続きについて振り返りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】亡くなった後に必要な届けや手続き
居場所の分からない相続人の探し方
居場所のわからない相続人を探す方法は、以下の3ステップです。
1. 戸籍を収集する
2. 戸籍の附票を利用する
3. 直接訪問または手紙を送る
それぞれを順番に見ていきましょう。
戸籍を収集する
相続人を特定するためには、まず亡くなった方の本籍地にある戸籍を収集します。相続手続きで必要な戸籍謄本は、以下の3種類です。
✓ 戸籍謄本
✓ 改正原戸籍謄本
✓ 除籍謄本
戸籍謄本は、紙から電子化されたり、様式の変更が行われたりしてきたため、高齢になるほど戸籍謄本の数が増える傾向があります。法定相続人のルールに従って、相続人を確定しましょう。
相続手続きに必要な戸籍謄本について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続手続きに戸籍謄本はなぜ必要?集め方や種類、有効期限などを解説
戸籍の附票を利用する
相続人が判明しても、居場所がわからないケースも少なくありません。その場合、戸籍の附票を取り寄せることで、戸籍が作られてから今までの住所の移り変わりを確認できます。なお、住所は住民票で管理されているため、戸籍謄本には現在の住所は記載されていません。ただし、住民票の情報と本籍地にある戸籍謄本は関連しています。戸籍の附票を取り寄せることで、相続人の現在の住所を確認でき、連絡を取ることが可能になります。
直接訪問または手紙を送る
住所がわかったら、直接その場所を訪問したり、手紙を送ったりして接触を図ります。相手が応答してくれたら、そのまま相続手続きを進めましょう。
相続人が連絡を無視する場合の対処法
相続人が連絡を無視する理由は、下記のように多岐に渡ります。
● 故人の死を受け入れられず、相続について考えられない
● 相続人同士の関係が悪化しており、連絡を取りたくない
● 手続きを面倒に感じている など
相続は、感情が絡むデリケートな問題です。相続人が連絡を無視する場合は、相手の心理を理解し、文書での連絡や第三者の介入を試みることが重要です。それでも解決しない場合は、法的手続きを考慮し、適切な方法で相続手続きを進めることが求められます。
あらゆる連絡法を試す
連絡がつかない相続人には、さまざまな方法で連絡を試みることが大切です。手紙だけでは相手が読んでいるかどうかわからないため、電話や訪問も検討しましょう。なお、連絡を取る際には、相続手続きの進捗や協議が必要なことを具体的に説明し、返事を求める期限を設けると良いでしょう。また、非協力的な相続人は、相続放棄を希望している場合もあります。相続放棄すると、相続人として扱われなくなるため、遺産分割協議には参加しなくて済みます。しかし、相続放棄するには、相続を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きしなくてはいけません。必要に応じて、相手に手続きを促すことも考えましょう。
無視するデメリットを伝える
相続手続きを無視することで生じる不利益を説明しましょう。例えば、「何もしないと、家庭裁判所で遺産分割調停をしなければならなくなりますが、お互い手間がかかります」と説明します。また、「いつかは相続手続きをしなければならないので、早めに解決しておく方が良いと思います」と穏やかに提案するのも良い方法です。相手に放置のデメリットを伝えることで、話し合いに応じやすくなる可能性があります。
遺産分割調停を申し立てる
相手が話し合いに応じない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。調停を申し立てると、家庭裁判所から相手の住所に呼び出し状が送られるため、自分で相手に連絡を取る必要はありません。なお、遺産分割調停は、相続人の一人または数人が申立人となり、他の相続人を相手方として、原則として相手の住所地の家庭裁判所に申し立てます。もし調停でも話し合いが成立しない場合は、裁判所が遺産分割の方法を決定する「遺産分割審判」に移行します。
相続人が行方不明の場合の対処法
行方不明の相続人を除外して遺産分割協議しても、法的に認められません。相手の居所がわからず連絡が取れない場合は、以下の対処法を検討しましょう。
● 不在者財産管理人を申し立てる
● 失踪宣告をする
それぞれを詳しく見ていきましょう。
不在者財産管理人を申し立てる
行方不明者の代わりに財産を管理する、「不在者財産管理人」を家庭裁判所に申し立てます。不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理し、遺産分割協議の代理を行うことも可能です。ただし、不在者財産管理人になれるのは、相続に利害関係のない親族や弁護士、司法書士です。共同相続人自身は管理人になれませんが、親族が適当な候補者でない場合、裁判所が専門家を選んでくれます。なお、申し立ては、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。手数料は収入印紙代800円と、郵便切手代が数千円程度です。仮に、専門家が管理人に選ばれた場合の報酬は、不在者の財産から支払われます。
失踪宣告をする
行方不明の相続人が7年以上生死不明である場合、「失踪宣告」を申し立てられます。失踪宣告とは、以下の2種類があり、長期間行方不明の人を法律上「死亡した」とみなす手続きです。
✓ 普通失踪
✓ 特別失踪
普通失踪は、行方不明が7年続くと申請可能です。一方、特別失踪は、戦争や自然災害に遭った場合で、危機が去ってから1年経った後に申請できます。失踪宣告が行われると、「死亡扱い」となるため、遺産分割協議に参加しなくてもよくなります。ただし、失踪宣告を受けたその人に相続人がいる場合、その相続人は協議に参加しなければなりません。なお、失踪宣告は、親族や利害関係者が申し立てを行います。家庭裁判所は、関係者への調査や公告を通じて、失踪者の行方を確認します。何も反応がなければ、失踪宣告が下されます。仮に、失踪宣告後、行方不明者が生きていた場合、家庭裁判所は申請に基づいて失踪宣告を取り消せます。
相続手続きを放置する4つのリスク
相続人と連絡が取れないからといって手続きを先延ばしにすると、以下の問題が発生する可能性があります。
● 預貯金の引き出しができない
● 不動産の活用ができない
● 株式の配当金が受け取れない
● 相続税が高くなる可能性がある
時間とコストがかかるため、できる限り早い段階で問題に対処することが重要です。
預貯金の引き出しができない
相続手続きを放置すると、亡くなった方名義の預貯金を引き出せなくなるリスクがあります。以前は相続人が法定相続分に基づいて預貯金の払い戻しを請求できましたが、2016年の最高裁判決以降、預貯金も遺産分割の対象となり、遺産分割協議が完了するまで全額の引き出しができなくなりました。ただし、相続法改正により、2019年7月以降は、葬儀費用や生活費が必要な場合に限り、遺産分割前でも仮払いを請求できます。仮払い請求金額は預貯金の3分の1に法定相続分を掛けた額(1つの金融機関で150万円まで)が上限です。仮に、相続されずに10年が経つと、その預貯金は民間共益活動に利用されます。
不動産の活用ができない
相続財産に不動産が含まれている場合、遺産分割協議を行わないと不動産を活用できません。相続が発生すると、不動産は法定相続人全員の「共有」状態になります。共有状態では、以下の行為に、すべての相続人の同意が必要です。
✓ 賃貸
✓ 改築
✓ 解体
✓ 建て替え
✓ 売却 など
また、使っていない不動産に対しても固定資産税の納税が必要です。さらに、実家が空き家になると、老朽化が進み、隣地に迷惑をかける可能性があります。
共有財産における管理方法については、下記の記事もあわせてチェックしてみましょう。
【関連記事】相続における共有財産とは|手続きの難しさやメリット・デメリットを解説
株式の配当金が受け取れない
相続手続きを放置することで、株式の配当金を受け取れなくなる可能性があります。一般的に、未受領配当金の請求権には時効があり、民法では10年間請求を行わないと権利が消滅します。また、株式を発行している会社によって、短い期間が設定されていることもあるため、注意が必要です。
株式における総則手続き方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【関連記事】株の相続税はいくら?上場・非上場別に評価方法や手続き、節税を解説
相続税が高くなる可能性がある
行方不明の相続人がいる場合は、法定相続分に基づいて申告する必要があり、税金を軽減するための以下の優遇措置を受けられず、相続税が高くなる可能性があります。
✓ 配偶者控除
✓ 小規模宅地の特例 など
なお、相続税の申告・納税は、相続開始後10ヶ月以内に行わなければなりません。ただし、遺産分割協議が3年以内に終わる見込みがある場合は、事前に税務署に報告しておけば、後から特例を受けられる可能性があります。また、相続開始から10年経過すると、特別受益や寄与分についての主張ができなくなります。相続税は相続人全体の負担に大きな影響を与えるため、早めに話し合い、遺産分割協議を進めることが重要です。もし相続税の申告や手続きに不安がある方は、専門家に相談すると良いでしょう。相続税のクロスティは、一人ひとりの状況に合わせた節税対策を提案し、二次相続まで見据えたサポートを提供しています。手続きに不安がある方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
相続人の中に連絡が取れない人がいると、相続手続きが複雑化します。この状況を放置すると、将来的に大きな不利益を被る可能性があるため注意が必要です。また、連絡が取れる相続人だけで遺産分割協議を進めることは、法律上認められません。戸籍謄本の取得など、行方不明の相続人に関する手続きは特に煩雑ですので、専門家に依頼することをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、ストレスも軽減できるでしょう。
最後に
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私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。
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