現金の相続税はいくらから?現金相続のメリットや相続対策を解説

現金は一見、相続財産の中で最もわかりやすく、受け取りやすい財産に思えるかもしれません。しかし、現金は評価額そのものが課税対象となるため、他の財産と比べて税負担が大きくなる可能性があります。また、預貯金とは異なり、手元にある現金は自分で申告しなければなりません。自己申告にもかかわらず、税務調査の対象になりやすい財産でもあります。万が一申告漏れがあれば、ペナルティを課されるリスクもあるため、正しく申告することが大切です。本記事では、現金相続における相続税の基礎知識や、現金ならではのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。資産をより多く残すために、生前に実践できる相続対策もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
・現金の相続税はいくらから発生するのか
・現金の相続税が高くなる理由
・現金を相続するメリット・デメリット
・現金が多い場合に検討したい5つの相続対策
・相続した現金の過少申告はばれる!
・まとめ
現金の相続税はいくらから発生するのか
現金の相続税は、遺産総額が以下の基礎控除額を超えた場合に発生します。
3,000万円 +( 法定相続人の人数 × 600万円 )
もし、現金を含む遺産総額が基礎控除額を下回れば、相続税は課税されません。例えば、法定相続人が1人で、遺産が現金2,000万円のみの場合、基礎控除額は3,600万円です。遺産総額は基礎控除額を下回っているため、課税対象額は0円となり、相続税は発生しません。一方、法定相続人が3人で、遺産総額が現金5,000万円の場合、基礎控除額は4,800万円です。このケースでは、基礎控除額を超えた200万円が課税対象となり、相続税が課せられます。現金は集計した金額がそのまま評価額となるため、課税対象額を把握しやすいのが特徴です。しかし、実際の相続では現金以外にも不動産や有価証券などが含まれるケースが多いため、遺産総額を正確に把握し、適切に算出することが大切です。
現金の相続税手続きについて振り返りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。
【関連記事】相続税はいくらから申告する?無税となる金額は?
相続税の対象となる現金の種類
相続税の対象となる現金は、以下の4つです。
✓ タンスや金庫に保管している現金
✓ 財布の中にある現金
✓ 金庫に預けている現金
✓ 亡くなる直前に預金口座から引き出した現金
現金は、その金額に関わらず相続財産に含めて相続税を計算しなければなりません。銀行に預けているお金は、残高証明書で金額を確認できますが、手元にある現金は自分で申告する必要があります。相続が発生した際には、預け入れされていない紙幣や硬貨も集めて、相続財産として忘れずに申告しましょう。
現金の相続税が高くなる理由
現金は他の財産に比べて、以下の理由から相続税の負担が大きくなる可能性があります。
● 額面で相続税が計算されるから
● 優遇措置がないから
例えば、1,000万円の現金を相続した場合、その額面に対して相続税が課せられます。
一方、自宅などの不動産は相続税評価額が下がるため、税負担が軽くなる可能性があります。さらに、「小規模宅地等の特例」を利用することで、相続税評価額を大きく引き下げることが可能です。そのため、相続財産の中で現金の比率が高ければ課税対象となる財産の総額が増え、その結果、相続税負担が大きくなってしまうでしょう。ただし、相続では、相続税だけを基準にするわけにはいきません。現金や不動産それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらが自分にとって最適かを総合的に検討する必要があります。
なお、相続のクロスティでは、ブログでは書ききれない「ここだけの話」をセミナーで詳しくお伝えしております。賢く相続を進めたい方は、ぜひセミナーへの参加をご検討ください。
現金を相続するメリット・デメリット
現金の相続には、相続手続きが簡単で使いやすいといったメリットがある一方、課税面での負担が大きくなりやすいという注意点もあります。そのため、現金を相続する際には、それぞれをしっかり理解し、賢く対策を講じることが重要です。ここでは、現金を相続する際に考慮すべきメリットとデメリットを、分かりやすく紹介します。
現金を相続するメリット
現金を相続するメリットは、以下の4つです。
✓ 遺産分割が簡単
✓ 納税や支払いがしやすい
✓ 管理の手間がかからない
✓ 管理費用がかからない
例えば、遺産が1,000万円の現金と一軒家だった場合を考えてみましょう。現金であれば、均等に分けるのは簡単です。一方、不動産の場合、相続税評価額を算出し、相続人間でどのように分けるかを決める必要があります。物件を売却して現金化するか、特定の相続人が物件を引き取るかを話し合わなければならず、時間と手間がかかります。なお、相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。期限内に相続税を支払わなければならないため、不動産や株式などの流動性が低い資産を相続した場合、現金化するための手続きが必要になる可能性があります。しかし、現金なら即座に納税資金を準備できるため、家族間でのトラブルを避けやすくなるでしょう。
現金を相続するデメリット
現金を相続するデメリットは、以下の3つです。
✓ 相続税の負担が重い
✓ トラブルが発生しやすい
✓ 申告漏れのリスクが高い
現金は分けやすい一方で、取り分を巡る争いが発生しやすい財産でもあります。例えば、兄弟3人で父親の遺産1,000万円を分ける際、1人が「生活費が足りないから多くもらいたい」と主張すれば、他の2人は不満を抱くかもしれません。不動産のように物理的に分けるのが難しい財産であれば、納得しやすい部分もありますが、現金では感情的な対立が起こりやすいのも事実です。また、現金は自宅に保管されているものも多く、相続人が全てを正確に把握するのは困難です。家のタンスに隠してあった100万円を相続税申告で見落とすと、税務調査で発覚した際に追微課税を受ける可能性があります。「自己申告だから大丈夫」と油断していると、ペナルティを科せられるため、注意が必要です。
相続税のペナルティについては、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税の申告漏れ!ペナルティとミスがバレる原因とは
現金が多い場合に検討したい5つの相続対策
現金が多い場合に検討したい相続対策は、以下の5つです。
● 暦年贈与を利用する
● 相続時精算課税制度を利用する
● 生命保険を活用する
● 不動産や株に資産を移す
● 特例を活用する
現金を多く持っている場合、生前から少しずつ対策をしておくと、相続時の税負担を減らしやすくなります。どの方法も一長一短があるため、家族構成や財産状況に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。
暦年贈与を利用する
現金が多い場合、年間110万円までの非課税枠以内に収めることで、相続税の負担を軽減することが可能です。生前贈与は相続とは異なり、財産を亡くなる前に譲り渡す方法です。現金を渡したい相手に毎年110万円まで贈与すれば、贈与税がかかることなく、財産を移転できるでしょう。ただし、110万円は受け取る側の合計金額です。例えば、父親から110万円、母親からも110万円の贈与を受けると、贈与税の課税対象となるので注意しましょう。
相続時精算課税制度を活用する
相続時精算課税制度を利用することで、一度の多額の現金を贈与税なしで移転できます。年間2,500万円までの贈与について贈与税が課税されず、贈与した人が亡くなった場合に、相続税という形で後に支払う仕組みです。なお、2024年1月1日以降、新たに年間110万円までの基礎控除が設けられました。そのため、相続が発生しても、年間110万円以内で贈与した分は相続財産に足し戻しされず、完全に非課税で移転できます。相続税が発生しますが、生前に多くの財産を移転したい場合は有効な手段となり得るでしょう。
生命保険を活用する
現金が多い場合、生命保険の非課税枠を活用することで相続税負担を大幅に軽減できます。非課税枠は、法定相続人1人あたり500万円です。例えば、法定相続人が3人の場合、非課税枠は 500万円×3人=1,500万円です。仮に4,000万円の生命保険金を受け取った場合、非課税枠1,500万円を差し引いた残り 2,500万円が課税対象となります。ただし、保険金の受取人が相続人以外の場合、非課税枠は適用されません。そのうえ、相続税額に「2割加算」が適用されてしまいます。また、契約内容や形態によって、相続税だけでなく所得税、贈与税が課せられる可能性もあるので注意が必要です。
不動産を購入する
不動産を購入することで現金を減らすとともに、相続税の負担を軽減できます。なぜなら、不動産の相続税評価額は、時価の約70%〜80%程度に評価されるからです。また、賃貸物件として貸し出せば、「貸家建付地」として評価され、さらに評価額を下げることが可能です。他にも、土地には優遇措置として「小規模宅地等の特例」があります。最大80%減額できる特例を上手に活用すれば、相続税の軽減効果をさらに高められるでしょうただし、不動産には維持費や管理の手間がかかるため、慎重に判断することが重要です。
特例を活用する
贈与税には以下のような「非課税特例」があります。
✓ 教育資金の一括贈与の特例
✓ 結婚・子育て資金の一括贈与の特例
✓ 住宅取得等資金の贈与の特例 など
うまく活用することで、基礎控除の110万円を超える現金も贈与税なしで移転できるでしょう。例えば、30歳未満の子や孫に教育資金を贈与する場合、最大1,500万円まで非課税で贈与できます。ただし、贈与した教育資金は、教育目的以外の使用や贈与を受けた子が30歳を超えて余った金額には、贈与税が課せられます。特例を利用する際には、各特例の適用要件や注意点をしっかりと理解し、計画的に活用することが大切です。
相続した現金の過少申告はばれる!
隠している高額な現金は、税務署にばれる可能性が高いです。なぜなら、税務署は独自のシステムを使って、納税者の財産状況を把握できるからです。そのため、過去の取引や所得、未申告の現金などが見逃されることはありません。さらに、相続人の口座や過去10年分の出金履歴も調査対象となります。高額な現金を隠していると、後でペナルティが科されることになるでしょう。特に、相続税の申告・納税は複雑です。タンス預金の扱いや申告の有無に不安がある方は、専門の税理士に相談することをおすすめします。
なお、相続税のクロスティは、相続専門の税理士が豊富な実績をもとに、二次相続を見据えた最適な節税プランを提供します。相続に関する疑問や不安がある方は、お気軽にご相談ください。
無申告がバレる理由や税務調査の流れを知りたい方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税の無申告はバレる?時効や罰則・少額でもバレる理由を解説
まとめ
現金は相続税対策の優遇措置が少ないため、そのまま相続すると税負担が大きくなる可能性があります。そのため、生命保険や不動産など他の資産に変えたり、生前贈与を活用したりして課税額を抑える対策が有効です。特に、資産規模が大きい方や相続税が高額になる可能性がある方は、早めに相続専門の税理士に相談し、生前から対策を進めることをおすすめします。
最後に
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私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。
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