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相続財産に含まれるもの|調べ方や課税される財産との違いとは

相続が始まると、亡くなった方の所有していたすべての権利や義務が相続人に引き継がれます。しかし、死亡保険金や死亡退職金は、法的には相続財産と見なされず「みなし相続財産」として扱われます。また、相続財産と相続税の対象となる財産の範囲は必ずしも一致しません。そのため、「どこまでが相続対象になるのか」「相続税がどの財産に課されるのか」と、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、具体例を挙げて相続財産にどのようなものが含まれるのか、相続税の対象となる財産について分かりやすく解説します。相続財産の全体像を把握し、納得のいく相続手続きを進めるための参考にしてください。

目次
相続財産とは
相続財産に含まれるもの
相続税の計算だけに含まれる財産
相続財産の調べ方
まとめ

相続財産とは

相続財産とは、亡くなった方が所有していたすべての権利や義務を指します。目に見える家やお金などの物理的な資産だけでなく、形のない権利や借金なども含まれます。亡くなった方が保有していた財産は「遺産」とも呼ばれますが、遺産と相続財産は同じ意味であると考えて問題ありません。なお、適切な遺産分割を実施するには、相続財産の全容を把握することが欠かせません。亡くなった方が生前に所有していた不動産や、預金口座の残高など、相続財産を事前にしっかりと調査することが大切です。一覧にまとめておくことで、遺産分割協議をスムーズに進められるでしょう。

相続財産を引き継ぐ方法

相続人は、亡くなった方の相続財産を調査した後、以下のいずれかを選択しなくてはいけません。

すべての財産を引き継ぐ「単純承認」
すべて放棄する「相続放棄」
プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」

相続は、相続人が相続の開始を知ってから、意志に関係なく、亡くなった方が所有する権利や義務を引き継ぐことになります。しかし、相続財産には、家や預金などのプラスの財産だけでなく、借金などの負債も含まれます。もし借金がプラスの財産を超える場合、すべての負担を相続人が背負うのは不公平に感じるかもしれません。また、たとえプラスの財産が負債より多くても、相続を受け入れたくない相続人もいるでしょう。そのため、相続人は相続の承認、または拒否を選べるようになっています。

相続財産に含まれるもの

相続財産に含まれるものは、大きく以下の2つに分けられます。

プラスの財産
マイナスの財産

一般的に相続財産として含まれるものを、確認してみましょう。

相続財産に含まれるプラスの財産

プラスの財産に含まれるものは、以下のとおりです。

不動産
預貯金
株式
自動車
宝石
事業資産
生命保険金
知的財産権
借地権
ゴルフ会員権 など

土地や建物は一般的な相続財産ですが、会社を経営している場合、法人の財産と個人の財産を混同しないよう注意が必要です。なお、不動産経営による将来の収益は現時点では発生していないため、相続財産には含まれません。

相続財産に含まれるマイナスの財産

マイナスの財産とは、相続の際に引き継がれる以下の負債を指します。

消費者金融からの借入金
クレジットカードの未払い残高
未払い医療費・家賃・公共料金
保証債務
住宅ローン など

亡くなった時点での借金も相続の対象となるため、相続人は返済義務を負います。仮に、相続する財産よりもマイナスの相続財産の方が大きい場合は、「相続放棄」や「限定承認」を検討しましょう。なお、財産調査が十分に行われていない段階で相続放棄を決めると、後にプラスの財産が発見されても、決定を撤回できません。また、相続放棄すると、借金などのマイナス財産は自動的に次の順位の相続人に移ります。そのため、事前に他の相続人に連絡を取らずに放棄を決めると、親族間でトラブルが生じる可能性があるため注意が必要です。相続財産調査をしっかりと行い、適切な対応を検討しましょう。

なお、相続放棄のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
【関連記事】相続放棄のメリットやデメリットは?

相続放棄の期限

相続放棄の期限は、相続があったことを知った日から3ヶ月以内です。期限を過ぎてしまうと、たとえ負債が資産を上回っていたとしても、単純承認したとみなされ、すべての財産を相続しなくてはいけません。ただし、3ヶ月はあくまでも、申述書などの必要書類を家庭裁判所に提出する期間です。期限内に書類を提出さえすれば、裁判所の審査がその後に続いても問題ありません。

相続税の計算だけに含まれる財産

相続税は基本的に相続財産全体に課されますが、相続財産に該当しない以下のものにも課税されます。

生前贈与財産
みなし相続財産
名義預金

もし誤った理解のまま相続財産調査を進めると、延滞税や追徴税が発生するリスクがあるため注意しましょう。

相続税が課せられない財産については、以下の記事をぜひ参考にしてください。

【関連記事】相続税の非課税財産|相続対策の方法や申告書の書き方について解説

生前贈与財産

相続税対策としてよく利用されます生前贈与ですが、以下のケースでは、相続税の課税対象となります。

相続発生7年以内に行われた生前贈与
相続時精算課税制度を利用した財産

2023年度の税制改正により、生前贈与の加算対象期間が従来の3年から7年に延長されました。2024年1月1日以降の贈与から、たとえ贈与財産が贈与税の基礎控除額(110万円)以下であったとしても、相続発生から7年以内の贈与であれば、相続財産に含めて計算しなければなりません。ただし、既に支払った贈与税は相続税から差し引かれるため、二重課税の心配はありません。

暦年贈与について振り返りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】暦年贈与とは|新ルールから使い方、相続税対策における3つの注意点

みなし相続財産

相続税法では、亡くなった方が生前に所有していた財産だけでなく、亡くなったことをきっかけに得られる財産も相続税の課税対象となります。このような財産を「みなし相続財産」と呼び、以下のようなケースが該当します。

生命保険金
死亡退職金
個人年金
生命保険契約に関する権利 など

例えば、死亡保険金が1,500万円支払われた場合、相続税の計算時に「500万円 × 法定相続人の数」が控除され、残りの金額に対して相続税がかかります。同様に、死亡退職金も受取人の固有財産として扱われますが、相続税の計算には含まれます。また、亡くなった方の未受給分の年金についても取り扱いが異なります。公的年金は、相続税の対象にはなりません。一方で、企業年金や個人年金といった私的年金の未受給分は、退職金や年金に関連する権利として課税対象となるため、注意が必要です。

名義預金

亡くなった方が資金を管理している他人名義の預金も、相続税の対象となる可能性があります。例えば、親が子名義で預金口座を開設し、お金を積み立てているケースも多いのではないでしょうか。しかし、親が子名義で作った預金口座に毎月一定額を積み立て、その口座から生活費やその他の支払いを行っていた場合、税務署は亡くなった親の財産としてみなす可能性があります。亡くなった親の財産と見なされれば、相続税の計算に名義預金が含まれます。また、これらの名義預金が発覚した場合、過去の贈与税が未払いであると判断され、相続税だけでなく贈与税が課税されるケースも少なくありません。そのため、名義を他人にしている預金があるか相続手続きの前に十分に確認し、必要であれば専門家に相談することが大切です。

相続財産の調べ方

相続財産調査は、財産の種類ごとに手順が異なります。ここでは、以下の代表的な財産の種別ごとに、調べ方を説明します。

金融機関にある預貯金
有価証券やその他の権利
不動産
貸金庫
負債

手順を踏むことで、相続財産の全貌を把握し、相続手続きをスムーズに進められるでしょう。

相続財産の調査方法については、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。
【関連記事】相続財産の調査方法とは?具体的な流れを徹底解説!

金融機関にある預貯金

まずは、亡くなった方が利用していた金融機関を以下の手がかりをもとに特定します。

通帳
キャッシュカード
金融機関からの郵便物 など

注意すべきは、通帳が発行されていない口座や紛失した口座がある場合です。少しでも取引があったと考えられる金融機関は、対象に含めて調査しましょう。

有価証券やその他の権利

以下の有価証券や権利は、相続財産に含まれます。

株式
仮想通貨
保険積立金
ゴルフ会員権 など

株券が見つかった場合、その発行会社の株主名簿に亡くなった方が記載されているかを確認します。また、証券会社からの取引残高報告書が見つかった場合、該当する証券会社に問い合わせて詳細を確認しましょう。なかでもネット証券は、書類が電子交付されるため郵便物が届かないケースも少なくありません。亡くなった方の利用していたサービスを考慮し、調査対象を絞り込むことが有効です。

不動産

亡くなった方が不動産を所有していた場合、固定資産税の納付書が届きます。納付書に同封されている固定資産税課税明細書から不動産の所有状況を確認しましょう。ただし、納付書が見当たらないからといって、不動産がないとは限りません。不動産の存在が疑われる場合は、固定資産評価証明書を取得して確認します。証明書は不動産の所在地ごとに市区町村役場で請求可能で、郵送でも手続きできます。なお、固定資産評価証明書を取得すれば、課税されていない不動産も含めて、亡くなった方が所有していたすべての不動産を確認できます。

貸金庫

相続が発生すると、亡くなった方が利用していた貸金庫の契約や、中に保管されている財産も相続の対象になります。貸金庫には、遺言書や不動産の権利書など重要な書類が保管されていることが多いため、早急に貸金庫の存在や中身を確認することが重要です。生前に貸金庫の存在を家族に伝えていたり、遺言書にその記載があれば良いのですが、もし伝えられていない場合には、銀行口座から引き落とされている「貸金庫の使用料」で確認できます。使用料が引き落とされている銀行に、契約している貸金庫がある可能性が高いでしょう。また、亡くなった方の通帳やキャッシュカードが見つからない場合でも、銀行からの通知で貸金庫の存在を確認できるケースもあります。貸金庫に関する使用料の引き落とし通知や契約更新通知が銀行から届くので、郵便物をしっかりチェックしましょう。

負債

以下の信用情報機関に開示請求を行うことで、亡くなった方の借入状況が確認できます。

日本信用情報機構(JICC)(外部リンク)
割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関(CIC)(外部リンク)
全国銀行個人信用情報センター(KSC)(外部リンク)

手続きは郵送で行えますので、各機関のホームページを確認して進めましょう。なお、個人間の貸し借りや保証債務は信用情報機関に登録されていないため、書類やメモをもとに地道に調査するしかありません。亡くなった方の人間関係や遺された書類をしっかりと調べましょう。

まとめ

相続財産とは、被相続人が亡くなった時点で所有していたすべての財産と負債を指します。しかし、遺産を分配する際に適用される民法と、相続税を計算・申告する際に適用される税法では、対象となる財産の範囲に違いがあります。そのため、何が遺産分割の対象であり、何が相続税の対象となるのかを正確に理解することが重要です。なお、相続税のクロスティでは、定期的に「相続セミナー」を開催しております。税制改正による最新の情報や、相続税申告のポイントなど、ブログでは伝えきれない情報を知りたい方は、ぜひ参加をご検討ください。

最後に

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