遺されていた遺言が無効のときはどうすればいいの?
今回の内容はvol.287「遺されていた遺言が無効のときはどうすればいいの?」です。
相続税は難しい言葉が多く、内容も複雑です。「相続マメ知識」は、そんな複雑で難しい相続税の知識を毎日少しずつ学べるよう1つ5分程度で読める内容にまとめたものです。これから相続について知りたいと思っている初心者から税理士試験受験者、税理士事務所や会計事務所の職員まで、まずは軽い気持ちで読み進めてください。
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生前に遺言書を作成していた方が亡くなり、内容を確認したところ形式や内容に不備があった場合、遺言書としては法的な効力がなく無効となってしまいます。たとえ法的に無効となってしまっても、亡くなった方の最後の想いをできるだけ尊重したいと考える方は多いと思います。もし無効になってしまった場合はどうすればいいのでしょうか?
遺言書が無効でも「尊重すること」は相続人次第
遺言書にはいくつかの種類があります。中でも法的に無効になってしまいやすいのが、亡くなった方が直筆で書いた自筆証書遺言書です。遺言書に不備があるために法的には無効とみなされても、遺言書自体が全く意味のないものになるわけではありません。遺言書に書かれた内容を相続人が受け止め、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容に沿った相続を実現することができます。遺言書自体は法的には無効なので、この場合は遺産分割協議書を整えれば相続手続きを進めることが可能です。本来ならば、遺言書には亡くなった方の全財産に関する内容が記載されているはずですが、記載がない財産や特定することができない財産、分け方があいまいな財産などがあった場合は、別途、それらの財産についても相続人全員で話し合いを行い遺産分割協議書に同意すれば、問題なく相続できます。
遺言書の内容が無効となるケース
遺言書は、様式に不備があり無効になってしまうケースと、内容に問題があるため無効になってしまうケースがあります。どの遺言書にも共通して「法的に無効」とみなされる要因は大きく2つあります。
① 遺言書に代理人や他人の意見が入っているもの
遺言者が望んでいた内容とかけ離れている遺言書であったり、他の人から指示されて作成した遺言書などは無効とみなされる可能性が高いです。遺言書の内容が無効と立証するのは難しいですが、たとえば、生前に遺言者が話していた内容と遺言書の内容が全然違っていたり、または、一部の相続人が望んでいた内容がそのまま記載されているという場合は、疑わしい遺言書であるといえます。
② 作成時に認知症等で遺言能力がなかった場合
遺言書を作成した時期が認知症や病気などの影響から、正しい判断をする能力がない状態であったと立証できる場合は、その遺言書は無効になります。これは、作成当時の病院のカルテや介護記録で証明することができます。
自筆証書遺言書が無効になるケース
自筆証書遺言とは、全文遺言者の直筆で書いた遺言書です。自筆証書遺言が無効になるのは、内容そのものよりも書き方に不備がある場合が多いです。無効となるケースは以下のものです。
① パソコンで作成したものや録音した遺言は無効
自筆証書遺言書は遺言者がすべて直筆で書かなくてはならず、パソコンを使ったり、録音した遺言は遺言書として認められません。ですが、2019年の法改正により、添付する財産目録のみパソコンで作成することが認められました。また、登記簿謄本のコピーや預金通帳のコピーを添付することも認められ、財産目録のみは代筆でもよいということになりました。ただし、添付した財産目録にはすべて、遺言書の署名・捺印が必要です。
② 日付・署名・捺印がない遺言書は無効
作成した日付、署名が直筆で書かれていないものは無効となります。
③ 共同で作成した遺言書は無効
遺言書は1人がすべてを直筆で記載して署名・捺印をします。例えば、仲のいい夫婦が相談して共同で作成したような遺言書は原則無効です。
④ 決められた方式ではない訂正・加筆は無効
訂正・削除・加筆が生じた場合は、無効とならないよう決められた方式で行わなければいけません。
公正証書遺言書が無効になるケース
公正証書遺言書は、遺言者が公証役場で2人の証人の立会いのもと作成される遺言書です。公証役場では、言葉の正確さには重点を置き細かく確認されますが、財産の分け方に関する正当性についての判断は一切してくれません。公正証書遺言書は様式に不備が出ることはほぼありませんが、まれに不適格者にあたる方が証人となり作られてしまう場合があります。この場合は無効となります。不適格者に該当する人は以下の通りです。
✓ 未成年者
✓ 推定相続人
✓ 受遺者
✓ 配偶者
✓ 直系血族
✓ 欠格者
✓ 遺言を作成する公証人の配偶者
✓ 四親等内の親族
✓ 公証役場の職員
など
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最後に
無効になってしまった遺言でも、亡くなった方の思いとして尊重したいと考える相続人もいれば、どうしても納得できない相続人もいます。誰か一人でも同意を得られなければ、その遺言の内容を実現するのは難しいでしょう。無理に同意を求めても、後々トラブルにもなりかねませんので、遺言を作成する場合は不備がないように作成しましょう。遺言の作成について困ったことがあれば、相続に強い税理士に早めに相談しましょう。
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