特別受益の持戻し免除とは?
今回の内容はvol.262「特別受益の持戻し免除とは?」です。
相続税は難しい言葉が多く、内容も複雑です。「相続マメ知識」は、そんな複雑で難しい相続税の知識を毎日少しずつ学べるよう1つ5分程度で読める内容にまとめたものです。これから相続について知りたいと思っている初心者から税理士試験受験者、税理士事務所や会計事務所の職員まで、まずは軽い気持ちで読み進めてください。
もっと詳しく知りたいと思われましたら過去の「相続マメ知識」や、更に詳しく解説した「ブログ」も見てみてください。
「特別受益」についての解説は、こちらの記事をご覧ください。
特別受益の対象となる生前贈与とは?
特別受益があった場合でも、遺言者がその特別受益を遺産分割協議の際に考慮しないでほしいという意思表示をすれば、特別受益の持戻しを免除をすることができます。また、持戻し免除の意思表示をしなくても配偶者に対する一定の居住用財産の贈与の場合には、その意思表示があったものと推定して扱われます。
特別受益の持戻し免除とは?
特別受益の持戻し免除とは、遺言者(亡くなった方)が特定の相続人に財産を多く分け与えたい場合、過去の贈与や遺贈を加味せず、残った遺産だけを遺産分割協議の対象としてほしいと相続人に要望するものです。そもそも「特別受益」は、相続人間で公平に遺産分割をするため、過去に受け取った財産(贈与や遺贈を含む)をすべて考慮して遺産分割協議をすべきと要請するものです。これに対して「持戻し免除」は、相続人間の公平ではなく、遺言者の意思を尊重するために設けられた制度です。
特別受益の持戻し免除の種類
持戻しには、以下の2種類があります。
持戻し免除の意思表示
遺言者が持戻し免除してくださいと遺言等に意思表示すること。
持戻し免除の意思表示の推定規定
遺言者は持戻し免除の意思表示はしていないけれども、配偶者に対する一定の居住用財産の贈与があった場合には、持戻し免除の意思表示をしていない場合でも、その意思表示があったものと推定して持戻し免除をすること。
持戻し免除の意思表示
持戻し免除の意思表示の記載方法には制限はありません。遺言書のような決まった形式があるわけではないのです。一般的に持戻し免除の意思表示の方法は以下の2つがあります。
明示の意思表示
明示の意思表示とは、亡くなった方の特定の贈与について持戻し免除をするという書面を作成しておきます。この書面はどんなものでもよく、贈与契約書でも遺言書でも構いません。実務上は、遺言書に生前贈与財産を特定し、その財産を贈与した旨と持戻し免除する旨を記載しておく場合が一般的です。明示の意思表示がされている場合、持戻し免除を争点として争われることはあまりありません。
黙示の意思表示
持戻し免除の意思表示について、争いが起きるとしたらこの「黙示の意思表示」の場合です。持戻し免除の意思表示は、書面で残すように決められているわけではありません。したがって、書面で残っていない黙示の意思表示であっても認められます。持戻し免除の意思表示は実務上、書面で残されていないため、黙示の意思表示が本当にあったのかどうかの判断が非常に難しいです。以下のものを総合的に判断して黙示の意思表示があったかどうか判断します。
✓ 被相続人と受贈者の関係
✓ 被相続人と他の相続人の関係
✓ 贈与に至った経緯や動機
持戻し免除の意思表示の推定規定
平成30年の相続法改正で、持戻し免除の意思表示の推定規定が設けられました。要件は以下の通りです。
① 婚姻期間が20年以上
② 受贈者は配偶者
③ 居住用の建物または土地の遺贈または贈与
わかりやすくまとめると、20年以上連れ添った配偶者に居住用不動産を贈与したとしても、その贈与は遺産分割時に加味しないで配偶者固有の財産として遺産分割をしてくださいという規定です。
持戻し免除と遺留分の関係
被相続人(亡くなった方)が持戻し免除の意思表示をしていたとしても、遺留分算定の基礎財産には特別受益を含まなければなりません。つまり、持戻し免除の意思表示は遺留分に対抗できるものではないということです。
関連記事
特別受益とは?どのような場合に特別受益は認められるのか?①
生前の相続対策
最後に
持戻し免除は、亡くなった方の意思で特定の相続人に遺産を多く与えたいときに、今まで渡した贈与や遺贈を加味しないで遺産分割をしてほしいとお願いするものです。特別受益とは全く相反する制度です。特別受益の制度では相続人間の公平を担保し、持戻し免除の制度では遺言者の意思を尊重しています。矛盾している制度のように見えますが、法定相続よりも遺言相続が優先されるということを示しています。少しややこしい話になりますので、生前贈与があり持戻し免除を検討したい場合は、相続に強い税理士にご相談ください。私たち、相続税のクロスティは、相続税を専門として取り扱っており、創業以来50年以上にわたって相続手続きをお手伝いしてまいりました。また、各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携をしており、様々な視点からお客様へアドバイスをすることができます。故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでも多くお守りし、私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。ぜひお気軽にお問合せください。
運営:名古屋総合税理士法人
(所属税理士会:名古屋税理士会 法人番号2634)