年末にできる相続対策まとめ|今年のうちに見直したい5つのポイント
年末が近づくと、「相続対策、今年は何もできていない」と不安を覚える方も多いのではないでしょうか。
相続は後回しにしやすいテーマですが、実は、いつ始めるかによって節税効果が大きく変わる分野です。特に年末は、暦年贈与の非課税枠や不動産評価の年度区切りなど、税務上の節目が重なるタイミング。少しの見直しでも、翌年以降の負担を大きく減らせる可能性があります。年内に必要な手続きを済ませておけば、年明けを安心して迎えられるだけでなく、将来の相続税対策としても大きな一歩になるでしょう。
本記事では、2025年中に確認しておきたい相続対策を5つのポイントにまとめて解説します。駆け込みで対策を進める際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
・相続対策はいつから始めるべき?年末に見直すべき理由
・今年中にできる相続税の節税対策5選
・年末に相続対策を進める際の注意点
・まとめ
相続対策はいつから始めるべき?年末に見直すべき理由
相続対策は「早ければ早いほど有利」といわれます。なぜなら、相続税における節税対策の多くが、時間を味方につけることで効果が高まる仕組みだからです。例えば、毎年110万円の非課税枠を活用する暦年贈与は、年数をかけるほど成果が積み上がります。一方で、準備が遅れるほど、選択肢が限られ、節税の幅も小さくなってしまいます。
なかでも年末は、相続対策を見直すうえで以下の2つが重なる貴重なタイミングです。
● 相続税に関係する多くの制度が「年単位」で区切られている
● 1年の締めとして財産の棚卸しがしやすい
さらに、年末年始は家族が集まりやすく、財産状況や将来の意向を話し合いやすい時期でもあります。家族会議をきっかけに、年内に着手できる実務的な対策へつなげることができれば、短期間でも十分な効果が期待できます。また、家族間で方向性をすり合わせておくことで、贈与の方針や不動産の扱いなど、来年以降の対策を計画的に進めやすくなるでしょう。
今年中にできる相続税の節税対策5選
年内でも実効性のある相続税対策は、以下の5つです。
● 110万円の非課税枠を使う
● 相続時精算課税を使うか判断する
● 遺言書を作成・見直しする
● 生命保険の契約内容を整える
● 墓地・墓石・仏壇は生前に購入する
それぞれを詳しく見ていきましょう。
110万円の非課税枠を使う
もっとも基本的な相続対策は、毎年110万円までの贈与が非課税になる暦年贈与を活用することです。暦年贈与は、1年(1月1日~12月31日)ごとに非課税枠がリセットされるため、数年間にわたって計画的に贈与することで、大きな相続税対策につながります。
ただし、贈与を行う際は、以下のような形式的な要件を満たすことが重要です。
✓ 贈与契約書を作成する
✓ 振込など贈与の事実が確認できる状態にする
✓ 贈与を受けた人がお金の管理をする など
また、同じ時期に同じ金額を渡すと「定期贈与」と判断される可能性があるため注意が必要です。
なお、2023年には生前贈与の持ち戻し期間が従来の3年から7年に延長されました。そのため、贈与者の死亡後7年以内に相続が発生すると、せっかく非課税で贈与した分も相続財産に加算されてしまいます。従来に比べ4年間も長く相続税の対象になるため、高齢になってからの贈与には十分な配慮が必要です。
一方で、相続人以外(孫世代やお世話になった方など)への贈与は、7年ルールの影響を受けません。孫世代へ生前に資金を移しておけば、成長のサポートになるだけでなく、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽くする効果も期待できるでしょう。
暦年贈与の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】暦年贈与とは|相続税対策で押さえるべき3つの注意点と廃止リスク
相続時精算課税制度を使うか判断する
相続時精算課税は、贈与した財産を将来の相続時にまとめて精算する制度です。累計2,500万円までは贈与時に税金がかからず、超えた部分は一律20%の贈与税が課されます。
最大のメリットは、贈与時点の評価額が適用されることです。将来値上がりが見込まれる不動産や株式を早めに贈与することで、実質的な節税につながる可能性があります。ただし、相続時精算課税を一度選択すると、暦年課税に戻れません。贈与額や家族構成、財産状況によって有利・不利が分かれるため、「いつ」「誰に」「何の目的で」「どの財産を」渡すのかをはっきりさせたうえで、将来の税負担まで含めたシミュレーションを実施することが大切です。
相続税と贈与税の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税と贈与税どっちが得?税率、特例の活用や相続税を減らす3つのポイントを解説
遺言書を作成・見直しする
遺言書は「作成して終わり」ではなく、状況の変化に合わせて見直しを重ねることで、はじめて役割を果たします。
まずは、今の家族構成や財産状況を踏まえた遺言書を作成することが第一歩です。しかし、時間の経過とともに環境は必ず変わります。結婚・離婚、相続人の増減、不動産の売却や取得、投資資産の変動、さらには法改正などによって、作成時の内容が実態に合わなくなるケースは珍しくありません。
内容が古いままだと、すでに存在しない財産が記載されていたり、意図していない不公平な配分になったりし、家族の負担を増やす可能性もあります。そのため、数年に一度は遺言書を確認し、必要に応じて手直しする習慣が大切です。専門家のサポートも受けながら、今の状況に合った内容へと整えておくことで、家族にとって安心感のある相続準備が整うでしょう。
なお、2025年10月からは公正証書遺言の作成手続きがデジタル化され、原本が電子データで作成・保管されるほか、条件を満たせば自宅などからオンラインで手続きに参加できる仕組みも導入されます。制度が使いやすくなるタイミングでもあるため、これまで「役場へ行くのが難しい」という理由で作成をあきらめていた方も、今の状況に合った内容へ整えておくことをおすすめします。
遺言書と異なる遺産分割が行われた際の注意点について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合、相続税と贈与税はどうなる?
生命保険の契約内容を整える
生命保険は、受取人や保険金の額を適切に設定することで、相続税の負担軽減や納税資金の確保に効果を発揮します。
そもそも死亡保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割協議の対象にはなりません。指定した相続人が確実に受け取れるため、現金での納税資金を確保しつつ、相続財産の圧縮にもつながります。また、法定相続人に応じた非課税限度額の範囲内であれば、相続税がかからない点もメリットです。
一方で、受取人の誤指定や保険契約の過剰加入などは、思わぬ贈与税や高額な保険料負担につながるリスクがあります。そのため、受取人・保険金額・保険料のバランスを定期的に見直し、契約内容を整理しておくことが大切です。
相続税における生命保険の扱いについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】名義保険とは?相続税・贈与税の取り扱いと相続対策としての活用方法
墓地・墓石・仏壇は生前に購入する
相続対策や家族の負担軽減を考えるうえで、墓地・墓石・仏壇の生前購入は有効な手段の一つです。
お墓や仏壇、位牌など先祖を供養する「祭祀財産」は、相続財産に含まれません。つまり、生前に用意すれば、家族の負担を減らしつつ、相続税の対象となる財産を減らす効果が期待できるのです。
ただし、購入方法や品選びには注意が必要です。例えば、ローン返済中に亡くなった場合、残債は相続財産から差し引かれず、節税効果は薄れてしまいます。また、祭祀財産は価格帯が幅広く、高額な品も数多く存在します。もちろん、必要性があり、個々の価値観に沿って選ぶものであれば問題ありません。ただし、一般的な相場から大きく外れるような高額品は、税務署から「節税目的ではないか」と疑われ、祭祀財産として認められない可能性があります。
リスクを避け、家族に安心して引き継いでもらうためにも、生前購入は計画性をもって進めることが大切です。
年末に相続対策を進める際の注意点
年末に相続対策を進めるうえで、気をつけておきたいポイントは以下の3つです。
● 贈与額は家計を圧迫しない範囲で設定する
● 不動産贈与や名義変更は専門家と連携して進める
● 駆け込み贈与は計画性をもって進める
それぞれを詳しく見ていきましょう。
贈与額は家計を圧迫しない範囲で設定する
年末の贈与は節税効果を意識しがちですが、生活資金を圧迫しない範囲で行うことが大切です。贈与の非課税枠(年間110万円)は、あくまで年度ごとの上限であり、上限枠いっぱいに無理に贈与すると、生活費や教育費、ローン返済などに支障が出る可能性があります。税務上のメリットと家計のバランスを慎重に見極め、無理のない範囲で贈与を進めましょう。
不動産贈与や名義変更は専門家と連携して進める
不動産の生前贈与は、相続税対策や特定の相手への財産承継に有効な手段ですが、手続きや税務上のルールが複雑です。贈与のタイミングや方法によっては、贈与税が相続税より高くなる可能性があるため注意が必要です。
贈与が効果的と考えられるケースは、以下の3つです。
✓ 将来の価格上昇が見込まれる不動産を所有している
✓ 賃貸用不動産など収益を生む物件を持っている
✓ 特定の相手に確実に財産を渡したい など
例えば、価格が上がる前に不動産を贈与すれば、評価額を抑えて財産を移せます。また、収益不動産を贈与すると家賃収入も受贈者に移り、将来的な相続税の負担を軽減できます。ただし、不動産贈与には贈与税や登記費用などの負担が伴います。生前贈与を検討する際は、事前にシミュレーションを行い、総合的に判断することが重要です。
なお、相続とは異なり、法律上は不動産の名義変更(贈与登記)を必ず行う義務はありません。しかし、登記がないと受贈者は公的に所有者として認められず、売却や担保設定ができないなど、不利益が生じます。権利行使や節税効果を確実にするためにも、税務や登記に詳しい専門家と連携し、登記を済ませておくことをおすすめします。
相続登記義務化の概要について振り返りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】令和6年改正 相続登記義務化|制度内容や相続への影響を解説
駆け込み贈与は計画性をもって進める
年末に慌てて贈与を行う「駆け込み贈与」は、必ずしも有利とは限りません。相続税と贈与税の一体化に向けた税制改正の議論が進んでいる今、慌てて贈与を進める前に、冷静に状況を確認して計画的に判断することが大切です。
具体的には、贈与の「持ち戻し」期間が従来の3年から7年に延長され、節税スキームとしての暦年贈与の活用が難しくなっています。例えば、2025年中に110万円を贈与しても、将来的に相続税の課税対象に含まれる可能性があります。また、家族構成や贈与額によっては、非課税枠にこだわらず贈与した方が総合的に有利になるケースもあるのです。
しかし、どの家庭でも同じ結果になるわけではありません。贈与が認められないリスクや、結果として相続税の負担が増える場合もあります。まずは自宅や金融資産など家庭の資産状況を確認し、計画的に判断しましょう。
相続税クロスティでは、一人ひとりの状況に応じた贈与計画の立案に加え、二次相続まで考慮した遺産分割や遺言作成のサポートを行っています。将来の税負担だけでなく、家族が安心できる相続環境づくりを整えたい方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
年末は、相続に関する状況を整理し、必要な準備を進める絶好のタイミングです。まずは、家族構成や資産状況を確認し、現状の課題や将来のリスクを把握することから始めましょう。そのうえで、節税手段の特徴や制度改正の動向を理解し、無理のない範囲で計画的に検討することが大切です。
最終的には、節税だけでなく、家族が円満に財産を承継できる環境を整えることが、年末の相続対策における本質的な目的と言えるでしょう。
最後に
相続税の申告手続きは、相続税のクロスティにお任せください
私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。
相続税は税理士にとっても特殊な分野の税目です。相続税の高度な知識だけでなく、民法や都市計画法など幅広い知識が必要な他、年月をかけ培った経験やノウハウが大変重要になる分野です。税額を安くする制度は多数ありますが、その選び方ひとつで大きくお客様の納税負担は変わります。
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運営:名古屋総合税理士法人
(所属税理士会:名古屋税理士会 法人番号2634)

名古屋総合税理士法人 代表税理士 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士
監修者プロフィール:
相続税に関するセミナー講師を年間100回程度務めるほか、大手信託銀行・不動産管理会社等の税務顧問や、日経新聞社講師、南山大学非常勤講師を務めている。
現在代表を務める名古屋総合税理士法人は、資産家の生前節税対策・法人化節税を得意とし、累計 1,000 件を超える名古屋最大級の相続税申告実績を誇り、相続税相談についての面談数は年間 500 件を超えるほか、数多くの不動産オーナーの顧問税理士を務めている。
【主な活動実績】
・著書「知識ゼロからの相続の教科書」は相続税/贈与税カテゴリーにて、出版週で第1位を獲得
・プロフェッショナルな会計ファームに授与される「Best Professional Firm」を3年連続で受賞
・書籍「相続に強い頼れる士業・専門家50選」に選出
・南山大学の非常勤講師
本記事のよくある質問
Q. 年末に相続対策を見直す理由は?
A. 年末は、相続対策を見直すうえで次の2つが重なる貴重なタイミングです。①相続税に関係する多くの制度が「年単位」で区切られている ②1年の締めとして財産の棚卸しがしやすい
Q. 年内にできる実効性のある相続税対策は?
A. 110万円の非課税枠を使う、相続時精算課税を使うか判断する、遺言書を作成・見直しする、生命保険の契約内容を整える、墓地・墓石・仏壇は生前に購入する、などがあります。
Q. 高齢になってからの贈与が相続税対策としてはリスクとなってしまう理由とは?
A. 2023年に生前贈与の持ち戻し期間が従来の3年から7年に延長されました。そのため、贈与者の死亡後7年以内に相続が発生すると、せっかく非課税で贈与した分も相続財産に加算されてしまいます。従来に比べ4年間も長く相続税の対象になるため、高齢になってからの贈与には十分な配慮が必要です。
Q. 相続時精算課税制度とは?
A. 相続時精算課税は、贈与した財産を将来の相続時にまとめて精算する制度です。累計2,500万円までは贈与時に税金がかからず、超えた部分は一律20%の贈与税が課されます。
Q. 年末に相続対策を進めるうえで、気をつけておきたいポイントは?
A. 贈与額は家計を圧迫しない範囲で設定する、不動産贈与や名義変更は専門家と連携して進める、駆け込み贈与は計画性をもって進めるなどが挙げられます。
Q. 相続税対策としての「駆け込み贈与」は効果があるの?
A. 必ずしも有利とは限りません。相続税と贈与税の一体化に向けた税制改正の議論が進んでいる今、慌てて贈与を進める前に、冷静に状況を確認して計画的に判断することが大切です。




