相続税の追徴課税はいくらから発生する?税率や時効、計算方法を解説

相続税は、相続が発生した(親族が亡くなった)ことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告しなければなりません。期限を過ぎたり、納めるべき税額よりも少ない金額で申告したりすると、「追徴課税」という重いペナルティが課せられます。たとえ意図的でなくても、税務調査で申告漏れや計算ミスが指摘される可能性もあるため、注意が必要です。
本記事では、追徴課税の概要をはじめ、発生する条件や税額の計算方法を、実際のケースを交えてわかりやすく解説します。追徴課税が発生した場合の注意点や対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
・相続税の追徴課税はいくらから発生する
・相続税に課せられる追徴課税とは
・相続税に科せられる追徴課税の税率
・【シミュレーション】1,000万円申告漏れの時の追徴課税はいくら?
・相続税の追微課税を受けた際の注意点
・追徴課税が払えない場合の対応方法
・まとめ
相続税の追徴課税はいくらから発生する
相続税の追徴課税は、特定の金額から発生するものではありません。申告内容に以下のような不備・不足があった場合に発生します。
● 申告漏れ
● 申告誤り
● 期限過ぎに納付
● 不正行為 など
追徴課税は、適切な税負担を確保し、不正を防ぐための制度です。たとえ意図的でなくても、申告の不備が見つかれば、延滞税や加算税などが課せられる場合があります。正確な申告を行うことは、不要なペナルティを避けるだけでなく、スムーズな相続手続きのためにも重要です。不安がある場合は、税理士に相談し、財産評価や書類作成を慎重に進めることをおすすめします。
相談する税理士の選び方を詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税申告は税理士の選び方が重要!依頼先を決める際の9つのポイントとは
追徴課税の時効
相続税の時効は申告期限から5年です。申告期限を過ぎて5年が経過すると、相続税を徴収する権利が消滅します。しかし、財産を隠すなどの悪質な行為が確認された場合、時効が7年に延長されます。時効の存在は、過去の不備を放置しても問題が解決するというわけではありません。税務署は過去の申告データを基に、相続財産の状況を容易に把握できます。加えて、税務署の担当者は財務や会計の専門家です。そのため、少しでも不審な点があれば、すぐに実地調査が行われる可能性があります。時効を待つのではなく、早期に正しい申告を行うことが重要です。
相続税に課せられる追徴課税とは
追徴課税は、相続税の申告や納付が適切に行われなかった場合に課される追加の税金を指します。ただし、「追徴課税」は一般的な用語であり、法律上の正式な名称ではありません。実務上は「追加の本税」と「附帯税(加算税や延滞税など)」を含むものとして扱われています。ここでは、追徴課税を構成する「本税」と「附帯税」について紹介します。
本税とは
本税とは、相続税や所得税など「本来納めるべき税金」です。例えば、相続税を申告する際に、遺産の金額や相続人の状況に基づき、税法に従って計算された税額が本税にあたります。もし、最初に納めた税金が不足していた場合、その差額が追加で支払うべき「追徴課税」として後から課せられることになります。
附帯税
付帯税は、本来の税金(本税)とは別に課せられる、以下のいわばペナルティの総称です。
✓ 過少申告加算税
✓ 無申告加算税
✓ 不納付加算税
✓ 重加算税
✓ 延滞税
✓ 利子税
これらの税は、納税義務を適切に履行させるための「行政的な制裁」として課せられます。しかし、悪質な不正が行われた場合、附帯税とは別に刑事責任を追及されることもあります。
相続税に科せられる追徴課税の税率
相続税に課せられる追微課税は、下表の通りです。
追徴課税が発生すると、元々の相続税に加えて、これらの加算税が追加されるため、最終的な納税額が大幅に増加します。特に、重加算税が適用されると、相当な金額が追加で必要になるケースも少なくありません。追徴課税を避けるには、相続財産を正確に把握し、期限内に申告・納付を行うことが重要です。
申告漏れが発生しやすいケースについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
【関連記事】相続税の申告漏れ!ペナルティとミスがバレる原因とは
【シミュレーション】1,000万円申告漏れの時の追徴課税はいくら?
以下は、1,000万円の申告漏れがあった場合の追徴課税のシミュレーションです。
本来の相続税額:1,800万円
申告・納税した税額:800万円
申告期限:令和7年1月1日
まず、本来の相続税額1,800万円から申告済みの800万円を差し引いた不足分1,000万円が本税となります。日数や通知のタイミングで金額が変動するため、早めに修正申告を行うことで負担を軽減することが可能です。
過少申告税
① 税務署からの通知後に修正申告を行った場合
50万円 × 5% = 2万5,000円
950万円 × 10% = 95万円
合計:97万5,000円
② 税務調査後に自主申告した場合
50万円 × 10% = 5万円
950万円 × 15% = 142万5,000円
合計:47万5,000円
なお、税務調査の事前通知が来る前に自発的に修正申告した場合、過少申告加算税は課されません。
無申告加算税
無申告加算税は、申告自体をしなかった場合に課される税金です。今回のケースでは、申告しているため、該当しません。
無申告のリスクについて詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税の無申告はバレる?時効や罰則・少額でもバレる理由を解説
重加算税
通常、悪質な隠ぺいが明らかでない限り、重加算税は課されません。しかし、意図的に申告を誤魔化した場合は、以下のように重加算税が課せられます。
1,000万円 × 35% = 350万円
延滞税
延滞税は、申告期限(令和7年1月1日)の翌日から納付日までの日数に応じて課されます。仮に納付日が令和7年6月5日では、155日が対象日数です。
2ヶ月以内(令和7年1月2日~3月1日):
1,000万円 × 2.4% × 59日 / 365日 = 3万8,794円
2ヶ月超(令和7年3月2日~6月5日):
1,000万円 × 8.7% × 96日 / 365日 = 22万8,822円
合計:26万7,616円
なお、延滞税特例基準割合は、「銀行の新規短期貸出約定平均金利」に基づいて変動するため、相続税の延滞税率も毎年変わります。そのため、最新の税率を確認することが重要です。
相続税の追微課税を受けた際の注意点
相続税の追徴課税を受けた場合に注意すべきポイントは、以下の4つです。
● 原則として現金一括で納付する必要がある
● 自己破産しても免責されない
● 相続人全員が支払い責任を負う
● 未納の場合、最終的には財産が差し押さえられる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
原則として現金一括で納付する必要がある
追徴課税は、原則として現金一括払いで納付する必要があります。仮に、追徴課税が高額になった場合でも、クレジットカードや分割払いなどによる支払いは認められていません。そのため、期限内に必要な納税資金を確保しておくことが大切です。
自己破産しても免責されない
自己破産をしても、追徴課税を含む税金は免責されない非免責債権に該当するため、支払い義務が残ります。自己破産は多額の借金による返済不能な状況から生活を立て直すための手段ですが、税金や罰金など一部の債務は免除の対象外です。
非免責債権として扱われるのは、以下の通りです。
✓ 相続税・所得税などの税金
✓ 国民健康保険料・年金保険料などの社会保険料
✓ 罰金や過料 など
そのため、税金に関する支払いを滞納した場合は、財産を失っても債務が残り続けることを理解しておくことが重要です。もし追徴課税を含む税金の支払いが困難な場合は、自己破産以外の解決策を検討することが重要です。税務署に相談することで延納や猶予の措置を検討してもらえる可能性があるため、早めに対応することをおすすめします。
相続人全員が支払い責任を負う
相続税の追徴課税が発生した場合、その納税責任は相続人全員に及びます。これは「連帯納付義務」という制度によるもので、相続人それぞれが自分の受け取った遺産額に応じて税金を負担することが求められます。
しかし、相続人Aが本来支払うべき税金を払わず、相続人Bがその負担を強いられると、相続人間での不和やトラブルが発生することが考えられます。このような事態を防ぐためには、追徴課税が発生した時点で速やかに納税、または猶予の申請を行うことが重要です。早期対応が、後々の家族間の争いを避けるためのポイントとなります。
連帯納付義務の時効は5年
連帯納付義務は、相続税申告期限から5年です。例えば、2024年1月1日に相続が発生した場合、申告・納付期限は2024年10月31日です。この日を基準に、連帯納付義務は2029年10月31日まで続きます。もし他の相続人が未納の場合、5年間の間に税務署から通知が届くことがあります。この通知を受けた場合、自分の分は納付していても、未払いの相続税を他の相続人に代わって支払う必要があります。そのため、通知が届いた際は、未納の相続人に確認し、速やかに対応することが重要です。ただし、通知が届かなければ、未納分を支払う義務は生じません。
未納の場合、最終的には財産が差し押さえられる
もし追徴課税を支払わずに放置していると、税務署は督促後に差し押さえの手続きを進めます。
差し押さえられる財産には、以下のものが含まれます。
✓ 給与
✓ 預金口座
✓ 不動産
✓ 車両
✓ 保険契約の解約返戻金 など
差し押さえられた財産は、取り戻せません。支払うべき税金は早めに納めることが大切です。
追徴課税が払えない場合の対応方法
追徴課税が支払えない場合の対処法は、以下の2つです。
● 納税猶予制度を利用する
● 借り入れをして支払う
それぞれを詳しく見ていきましょう。
納税猶予制度を利用する
追徴課税が一時的に支払えない場合、納税猶予制度の利用を検討しましょう。猶予制度では、以下のような特別な事情があるときに、税金の支払いを後に延ばすことが可能です。
✓ 期日までに支払えない
✓ 一括で支払うと事業の継続が困難になる
✓ 災害で財産を失った など
そんな納税猶予制度には、「納税猶予」と「換価の猶予」の2つがあります。それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。
納税の猶予
納税猶予は、自然災害などの特別な事情がある場合に税金の支払いを延期できます。申請には、修正申告書と猶予申請書を同時に提出する必要があります。猶予が認められれば、最大で2年間にわたって分割で納税が可能です。
換価の猶予
換価の猶予は、差し押さえられた財産の売却を延期したり、新たに差し押さえを防いだりできます。利用するためには、担保を提供するなど厳しい条件が設けられています。認められれば、1年に限り分割して納付できます。
借り入れをして支払う
銀行などの金融機関からの借り入れを利用し、追徴課税分を早急に支払う方法も選択肢の一つです。追徴課税は自己破産しても免責されず、支払いが遅れるほど延滞税が増加してしまいます。借りたお金は後で返済する必要がありますが、延滞税の増加や財産の差し押さえといったリスクを回避できます。
まとめ
相続税の追徴課税とは、相続財産を正しく申告しなかった場合や、申告を怠った場合に課されるペナルティです。申告漏れや誤りがあると、追徴課税が発生し、追加の納税だけでなく法的リスクも伴います。そのため、相続税の申告は正確に行うことが重要です。万が一、申告漏れが発覚した場合は、できるだけ早く修正申告を行うことで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
なお、相続税申告に不安がある方は、税理士に相談することをおすすめします。税理士は、税務調査や追徴課税のリスクを回避するための専門的なアドバイスを提供し、相続手続きを安心して進められるようサポートしてくれます。早期に専門家の助けを得ることで、将来のトラブルを未然に防げるでしょう。
最後に
相続税の申告手続きは、相続税のクロスティにお任せください
私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。
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