相続手続きに戸籍謄本はなぜ必要?集め方や種類、有効期限などを解説

相続手続きを進める際に、ほぼ確実に必要となるのが「戸籍謄本」です。相続税申告や不動産の名義変更、銀行口座の名義変更など、さまざまな手続きで必ず求められます。しかし、普段の生活であまりなじみのない戸籍謄本に関して「どうして必要なのか?」「どこで、どのように取得すればいいのか?」という疑問があるかもしれません。また、戸籍謄本は、亡くなった方だけでなく、相続人自身のものも用意する必要があります。本記事では、相続手続きの最初のステップである戸籍謄本について、取得方法や必要性など、取り扱いに関する疑問点をわかりやすく紹介しています。
目次
・そもそも戸籍謄本とは
・相続手続きに戸籍謄本が必要な理由
・相続手続きに必要な戸籍謄本の種類
・名古屋市の場合の戸籍謄本の集め方
・相続手続きで揃えた戸籍謄本に有効期限はある?
・戸籍取得の手間を省くには法定相続情報一覧図を活用しよう
・まとめ
そもそも戸籍謄本とは
戸籍謄本は、戸籍に登録されている全員の身分に関する以下の情報が記載された写しです。
● 本籍地
● 戸籍筆頭者の名前
● 戸籍に登録されている全員の名前、生年月日、親の名前と続柄
● 各人の出生や婚姻に関する詳細 など
戸籍とは、日本国民の出生、婚姻、死亡など、家族や親族に関する大切な情報を記録し、証明するための制度です。現在では、夫婦と未婚の子を一つの単位として戸籍が作られています。子が結婚すると、元の戸籍から外れ、自分たちの新しい戸籍が作成されます。住民票が現住所を記載しているのに対し、戸籍謄本は本籍地や家族関係の詳細が記載されている点が大きな違いです。
戸籍謄本と戸籍全部事項証明書の違い
「戸籍謄本」と「戸籍全部事項証明書」は、実質的に同じ内容を指します。戸籍謄本とは、紙に記録された戸籍の写しを指し、戸籍全部事項証明書は、電子化された戸籍情報を証明する書類です。現在、多くの役所では戸籍情報がデジタル化されているため、戸籍全部事項証明書が一般的に発行されています。ただし、「戸籍謄本」という表現の方が馴染みがあるため、現在でも戸籍全部事項証明書も含めて「戸籍謄本」と呼ばれる傾向にあります。そのため、相続手続きなどで戸籍謄本を求められた場合でも、戸籍全部事項証明書で問題なく手続きを進められます。
相続手続きに戸籍謄本が必要な理由
相続手続きを進める際、保険会社や金融機関、登記所などに以下の手続きを依頼すると「故人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を用意してください」と求められます。
● 相続人調査
● 遺産分割手続き
● 生命保険金の請求
● 預貯金の名義変更
● 不動産の相続登記
● 自動車の名義変更
● 相続放棄や限定承認の申し立て など
なぜなら、公的文書として故人の家族構成や親族関係を正確に記録しているためです。戸籍謄本によって、法律で定められた相続人が誰なのかが明確になります。例えば、亡くなった方名義の銀行口座を解約する際、遺産分割協議書や印鑑証明だけでは、その相続人が本当に適切な人物であるかを判断するのが難しい場合があります。相続人ではない人に資産を譲渡してしまうと、後で本当の相続人からの請求を受け、再度支払い手続きなどが必要となるかもしれません。また、戸籍に関する書類は、故人が生まれた時から亡くなるまでの全ての情報を記録しています。そのため、子がいる場合は、最低でも13歳頃まで遡って戸籍を取得し、遺産分割協議に参加していない潜在的な相続人が存在しないか確認することを求められます。ただし、現在の戸籍謄本だけでは過去の家族構成や相続関係のすべてを把握できない場合もあります。結婚、離婚、養子縁組などの理由で過去に戸籍が移動している場合、以前の戸籍(除籍謄本や改製原戸籍)も確認する必要があります。
相続手続きで戸籍謄本の何通必要か
相続手続きを行う際、必要となる戸籍謄本は1通から2通程度で済むケースが一般的です。取得した戸籍謄本は、手続き先に提出すると基本的には原本が返却されるため、必要以上に多く用意する必要はありません。ただし、以下の提出先では、原本還付の手続きが必要となるので注意です。
✓ 法務局
✓ 裁判所
例えば、法務局で相続登記を行う際、相続登記申請書に「原本還付を希望する」と記載しておかないと、戸籍の原本は返却されません。また、相続に関する調停の申し立てや相続放棄、限定承認の手続きにも戸籍謄本が必要です。原本の返却を希望する場合は、家庭裁判所に原本還付の申立書や、上申書を提出する必要があります。なお、の可否は手続きや裁判所によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
相続手続きに必要な戸籍謄本の種類
相続手続きにおいて必要な戸籍謄本は以下のとおりです。
それぞれの違いを、詳しく見ていきましょう。
戸籍謄本・戸籍抄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本の違い
戸籍謄本・戸籍抄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の違いは、下表のとおりです。
相続手続きでは、現在の情報だけでなく、過去の記録が含まれた書類も必要です。手続きごとに必要な戸籍謄本の種類が異なるため、どの書類が求められているかを確認し、正確に準備することが大切です。
名古屋市の場合の戸籍謄本の集め方
戸籍謄本は、以下の2つの方法で取得できます。
● 本籍地のある市区町村役所の窓口で取得
● 郵送請求
令和6年3月1日から、本籍地が市外の場合でも、戸籍証明書などの取得が可能になりました。しかし、郵送での請求には対応していないため、直接窓口で申請する必要があります。また、本籍地が市外の場合は、請求から交付までに時間がかかることがあります。当日に交付できない場合は、後日改めて窓口を訪れて請求する必要があります。
戸籍謄本取得に必要な書類
戸籍謄本を取得するには、以下の書類が必要です。
✓ 申請書
✓ 手数料(定額小為替や普通為替)
✓ 返信用封筒(返信用切手を貼り、宛名を書いたもの)
✓ 本人確認書類のコピー
✓ 任意代理人の場合は委任状
✓ 法定代理人の場合は法定代理人であることを証明する資料
✓ 第三者が請求する場合は、請求の正当性を示す資料
戸籍謄本を取得するには、市区町村役場で「戸籍に関する証明書交付申請書」を記入する必要があります。申請をスムーズに進めるためには、市区町村役場のホームページから申請書をダウンロードし、事前に記入して持参することをおすすめします。
戸籍謄本取得に必要な費用
名古屋市で戸籍謄本取得に必要な費用は、以下のとおりです。
✓ 戸籍謄本:1通450円
✓ 除籍謄本:1通750円
✓ 改製原戸籍謄本:1通750円
郵送で請求する場合は、上記の料金に加えて返信用切手などの費用も必要です。
相続手続きで揃えた戸籍謄本に有効期限はある?
相続手続きに使用する戸籍謄本は、下表のように申請先によって有効期限が異なります。
法務局や税務署に提出する書類には、有効期限はありません。つまり、何十年も前に発行された戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍でも問題ないのです。ただし、相続登記に必要な戸籍謄本は、被相続人が亡くなった後に取得したものでなくてはいけません。生前に取得した戸籍謄本には、死亡が記載されていないため、相続手続きには使用できないので注意しましょう。また、相続開始直後に取得した戸籍謄本では、相続人が確定していない可能性もあります。そのため、相続税申告書には、相続開始から10日以上経過した後に取得した戸籍謄本を用意する必要があります。
戸籍取得の手間を省くには法定相続情報一覧図を活用しよう
法務省が提供する「法定相続情報証明制度」を利用することで、無料で法定相続情報一覧図を取得できます。法定相続情報一覧図を取得するメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
法定相続情報一覧図を取得するメリット
法定相続情報証明制度を使って法定相続情報一覧図を取得するメリットは、下記の3つです。
✓ 戸籍の束を何度も出し直す必要がなくなる
✓ 確認ミスが減少する
✓ 相続手続きを効率化できる
法定相続情報証明制度を利用すると、複数の銀行での手続きがスムーズになります。通常は、各銀行に戸籍謄本の束を提出し、手続き後に返却を受けます。そして、次の銀行でまた同じ手続きを繰り返さなくてはいけません。法定相続情報一覧図の写しを使うと、法務局から必要な枚数を一度に取得できるため、銀行ごとに手続きをする手間が省けます。また、銀行側でも確認作業やコピー作業が減るため、処理がスムーズになり、待ち時間も短縮されます。財産が多い方や、相続税の申告が必要な方、複数の銀行で手続きをする方に特におすすめです。
法定相続情報一覧図を取得するデメリット
法定相続情報証明制度を利用するには、まず「法定相続情報一覧図」を自分で作成しなければなりません。一覧図は、家系図のように相続関係をまとめたもので、作成するのに時間と手間がかかります。さらに、作成した一覧図をもとに法務局で認証を受ける必要があります。そのため、相続手続きを行う機関が少ない場合や、複雑な相続がない場合には、制度を利用するメリットが少ないかもしれません。
まとめ
必要な戸籍謄本の部数や取得時期は手続きによって異なります。例えば、不動産の名義変更では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本が必要ですが、相続税の申告では、相続開始後の戸籍謄本が求められます。手続きに応じて、どの書類が必要かを確認し、正確に準備することが大切です。また、市区町村役場で戸籍謄本を取得できますが、亡くなった方が遠方に住んでいた場合は、取得までに時間や費用がかかります。しかし、相続手続きには期限があるため、法定相続人を早めに確定し手続きすることが重要です。もし自分だけで書類を集めるのが難しければ、行政書士や税理士などの専門家に依頼して、戸籍謄本の取得を代理してもらうのも一つの方法です。専門家に依頼することで、手続きの負担を軽減できるでしょう。
最後に
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