特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度とは?
今回の内容はvol.207「特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度とは?」です。
相続税は難しい言葉が多く、内容も複雑です。「相続マメ知識」は、そんな複雑で難しい相続税の知識を毎日少しずつ学べるよう1つ5分程度で読める内容にまとめたものです。これから相続について知りたいと思っている初心者から税理士試験受験者、税理士事務所や会計事務所の職員まで、まずは軽い気持ちで読み進めてください。
もっと詳しく知りたいと思われましたら過去の「相続マメ知識」や、更に詳しく解説した「ブログ」も見てみてください。
相続税は現金や不動産だけではなく、美術品も相続税の課税対象です。美術品は売買実例価格や、専門家による鑑定価格から相続税を計算します。平成30年度に行われた税制改正で新しく「特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度」が創設されました。これにより美術品に対する相続税の納税が一部猶予されます。
そもそも「特定の美術品に係る相続税の納税猶予」とは?
「特定の美術品に係る相続税の納税猶予」は、美術品の保存・活用や次世代への確実な継承のために、個人が所有する美術品について美術館に寄託を促すために創設されました。美術品の中でも文化財に指定されているようなものは、美術館だけではなく個人が保有しているものも多くあります。個人が所有している美術品は、相続をきっかけに散逸や海外に流出するなどして次世代に引き継がれていかないことが懸念されています。
相続税が猶予される制度の内容とは?
では、実際どれくらいの金額を猶予してくれるのでしょうか。
「特定の美術品に係る相続税の納税猶予」では、美術館などに美術品を寄託していた人が亡くなったときに、一定の条件の下で美術品の評価額のうち80%の額に対応する相続税の納税が猶予されます。
納税猶予の対象となる美術品の要件
重要文化財に指定された美術工芸品または登録有形文化財(建造物は含みません)であって、世界文化の観点から歴史上、芸術上、学術上特に優れた価値があるものとされています。
美術品を寄託する美術館の要件
美術品を寄託する美術館は、博物館法に規定する博物館または博物館に相当する施設として指定された施設のうち、美術品を公開したり、保管を行うものであることとされています。この制度の適用を受けるには、以下のことが求められます。
・ 美術館と美術品の長期寄託契約を締結していること
・ 文化財保護法に規定する保存活用計画について文化庁長官の認定を受けること
また、美術品を相続した人は、上記に基づいて寄託を継続する必要があります。
その他の手続き
「特定の美術品に係る相続税の納税猶予」の適用を受けるには、担保を提供する必要があります。また美術品の相続人は、以下の書類を3年ごとに税務署に提出しなければなりません。
・ 継続届出書
・ 寄託先の美術館が発行する証明書
税額の計算方法
① 納税猶予制度を適用しないものとして、通常通り相続税の税額を計算する。
② 美術品を相続した人について、通常の価格でその美術品のみを相続したものとして相続税の税額を計算する。
③ 美術品を相続した人について、通常の価格の20%の額でその美術品のみを相続したものとして相続税の税額を計算する。
猶予される税額は②で求められる税額から③で求められた税額を差し引いた金額です。美術品を相続した人が最終的に納付する税額は、①で求められる税額から猶予される税額を差し引いた額です。
猶予された税額の免除
以下の場合、猶予された税額の納税が免除されます。
・ 相続人が死亡した場合
・ 美術品を寄託している美術館に、その美術品を寄贈した場合
・ 自然災害が起きて、美術品が滅失した場合
猶予の終了
以下の場合、猶予が終了してしまいますので猶予された税額と利子税を納めなければいけません。利子税は相続税の申告期限からの期間に応じて計算します。
・ 美術品を譲渡した場合
・ 美術品が滅失した場合または紛失した場合
・ 長期寄託契約が終了した場合または保存活用計画の期間が満了したのち新たな認定を受けなかった場合
・ 重要文化財の指定が解除された場合や、登録有形文化財の登録の抹消があった場合または、保存活用計画の認定が取り消された場合
・ 寄託先の美術館が廃止された場合。(別の美術館に寄託した場合を除く)
これらの事実があった場合、文部科学大臣または文化庁長官から税務署に通知がいきます。
最後に
納税猶予の適用を受けるためには、通常の相続税の申告よりも時間や手間がかかってしまいます。美術品は、美術館との長期の契約の締結や文化庁長官の認定が必要になるため、相続税に詳しい税理士に早い段階で相談することをオススメします。私たち、相続税のクロスティは、相続税を専門として取り扱っており、創業以来50年以上にわたって相続手続きをお手伝いしてまいりました。また、各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携をしており、様々な視点からお客様へアドバイスをすることができます。故人から受け継いだ大切な遺産を少しでも多くお守りし、私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。ぜひお気軽にお問合せください。
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