おしどり贈与とは?メリットとデメリットを税理士が解説
今回の内容はvol.174「おしどり贈与とは?メリットとデメリットを税理士が解説」です。
相続税は難しい言葉が多く、内容も複雑です。「相続マメ知識」は、そんな複雑で難しい相続税の知識を毎日少しずつ学べるよう1つ5分程度で読める内容にまとめたものです。これから相続について知りたいと思っている初心者から税理士試験受験者、税理士事務所や会計事務所の職員まで、まずは軽い気持ちで読み進めてください。
もっと詳しく知りたいと思われましたら過去の「相続マメ知識」や、更に詳しく解説した「ブログ」も見てみてください。
おしどり贈与とは
おしどり贈与とは、正式には「配偶者への居住用不動産の贈与の特例」といいます。この特例では、居住用の不動産もしくはそれを取得するための金銭の贈与が行われた場合に、最高2,000万円まで控除できるという制度です。この特例を受けるには以下3つの要件を満たしている必要があります。
① 夫婦の婚姻関係が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
内縁関係の妻では認められません。また期間の20年は通算でも認められているので、一度離婚し、また同じ人と再婚した場合でも要件を満たすことができます。
② 贈与された財産が居住用不動産またはその取得資金であること。
資金の使用目的が居住用不動産の取得に限定されているので、その他の用途には使うことができません。
③ 贈与された年の翌年の3月15日までに贈与された不動産または贈与されたお金で取得した不動産に居住していること。またその後も引き続き住み続ける見込みがあること。
この特例は居住用財産限定で使えるものなので、贈与を受けて実際に住む必要があります。税金対策のために住む予定のない不動産を贈与して相続税を下げるというやり方は租税回避になってしまいます。
おしどり贈与を活用すべきかどうか
おしどり贈与を活用すべきかしないべきかは目的や財産総額によって決まります。
おしどり贈与のメリット
① 財産を分散させて相続税を減らすことができる。
おしどり贈与で2,000万円分の財産を贈与しておくことで将来の相続時に払う相続税が安くなる場合があります。例えば、夫婦の財産に夫名義のものが多くある場合、夫が先に亡くなった場合に夫名義の財産の総額が課税の対象となります。その財産額に税率をかけて相続税を計算するため、2,000万円の財産を減らしておけば、後の相続税も減らすことができるのです。
② 相続の直前の贈与であっても相続財産を減らすことができる。
通常の贈与の場合「生前贈与加算」といって相続開始前3年以内に行われた贈与について、相続税の計算の際に贈与した財産額を足さなければならないという決まりがあります。ですが、おしどり贈与の場合は相続税の計算をする際に贈与した財産額が足し戻されるということはありません。
③ いずれ自宅を手放そうと考えている人は3,000万円特別控除が使える。
おしどり贈与で配偶者に居住用不動産もしくは取得資金を相続し、しばらく住み続けるが、最後は家を売って子どもたちに現預金を渡したいという人もいると思います。家を売る際、所得税に関して「3,000万円の特別控除の特例」が使えますが、これは売却益から3,000万円を控除するというものです。自宅の名義が夫だけであれば売却による所得は夫だけに発生するため3,000万円だけが控除されることになります。一方でおしどり贈与を利用して妻にその持ち分をいくらか贈与しておいた場合、夫と妻の双方で3,000万円控除が適用できます。そのため、売却時に譲渡所得(売却益)が発生しない場合もあり、所得税もかからなくなる可能性がでてきます。
おしどり贈与のデメリット
① おしどり贈与を使わなくても「配偶者の税額軽減」で相続税を減らせる可能性がある。
亡くなった人の配偶者が相続で財産を取得した場合、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分に相当する金額」のどちらか大きい方の金額まで相続税がかかりません。上記を超えて相続が発生しそうな場合は、おしどり贈与が有効かもしれませんが、贈与時のコストと相続税の節税度を比べ、検討する必要があります。
② 「おしどり贈与」を受けた人が先に亡くなってしまう可能性がある。
おしどり贈与をしたのに贈与された人が贈与した人より先に亡くなってしまうこともあります。この場合、他に相続人がおらず贈与した財産が戻ってしまうとコストをかけて「おしどり贈与」した意味がなくなってしまいます。特に相続人が配偶者しかいない場合は、おしどり贈与すべきかどうかをよく検討する必要があります。
最後に
おしどり贈与は一度に2,000万円もの財産を税金をかけずに贈与できる制度です。メリット、デメリットをしっかり理解し、節税効果や費用面も踏まえて検討することが大切です。私たち、相続税のクロスティは、相続税を専門として取り扱っております。各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携しておりますので、様々な角度からお客様のお悩みを解決することができます。「おしどり贈与」を使った場合と使わなかった場合の相続税の試算、二次相続やその後の相続まで考えた相続シミュレーションも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでもお守りすべく、私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。お会いできる日を心よりお待ちしています。
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