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相続税の税制改正2026(令和8年度)|変更点と今後の節税対策

2026年度(令和8年度)の税制改正では、単なる負担増ではなく、資産移転の実態に即した課税へと軸足を移す内容となっており、これまで有効とされてきた一部の対策にも影響が及びます。資産移転や評価圧縮を支えていた前提ルールが多方面で見直されるため、「資産を次世代へどう引き継ぐか」と考えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、2026年度税制改正における相続税・贈与税の主な変更点を解説します。資産防衛戦略のポイントもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次
2026年度税制改正|相続税・贈与税における8つの主な変更点
相続税の税制改正はいつから適用されるのか
税制改正を踏まえた今後の相続対策
まとめ

2026年度税制改正|相続税・贈与税における8つの主な変更点

2026年度(令和8年度)の税制改正における相続税・贈与税の主な変更点は、以下の8つです。

貸付用不動産の評価方法の見直し
不動産小口化商品の評価方法の見直し
教育資金一括贈与の非課税措置終了
個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の延長
非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予特例延長
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の延長
農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の延長
所有権移転登記等に対する登録免許税の軽減措置の延長

制度の延長による救済措置が盛り込まれる一方で、不動産や贈与を活用した従来の防衛策には厳しい見直しが実施される予定です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

貸付用不動産の評価方法の見直し

税制改正により、相続開始前5年以内に取得または新築した貸付用不動産は、時価に近い水準で評価されます。

従来は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基準に算定されるため、実際の市場価格よりも相続税評価額が低くなる傾向がありました。価格差を活用すれば、相続直前に不動産を取得しても税負担が抑えられました。

しかし、改正により、取得時の価格を基準に地価の変動などを反映した価額の約80%で評価される仕組みに変更されます。そのため、短期的な不動産取得による節税は難しくなる見込みです。一方で、不動産の取得から5年を経過していれば新ルールの対象外となる救済措置が設けられています。そのため、不動産を活用した相続対策は今なお有効です。今後は、短期的な取得による節税ではなく、5年・10年先を見据えた中長期的な計画と、早い段階からの準備が重要となるでしょう。

不動産を活用した相続対策について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】相続税節税に不動産はもう遅い?評価厳格化に勝つ新時代の相続戦略

不動産小口化商品の評価方法の見直し

不動産小口化商品については、取得時期にかかわらず、相続時または贈与時における取引価格(時価)を基準に評価する取扱いへ見直されます。

不動産小口化商品とは、不動産を複数の投資家で分割保有し、賃料収入や売却益を持分に応じて受け取る投資商品です。従来は出資持分として評価されるため、相続税評価額が市場価格よりも低く算定される傾向がありました。評価差を利用し、現金を小口化商品へ転換することで、相続税の課税対象となる評価額を抑える手法が用いられてきました。

しかし改正後は、以下のような客観的な指標を基に時価を把握し、評価額に反映させます。

事業者が提示する買い取り価格・処分価格
実際の売買実例価額
定期報告書に記載された価格 など

見直しにより、評価額と市場価格の差を前提とした節税効果は縮小し、不動産小口化商品を活用した短期的な資産圧縮は成立しにくくなると考えられます。

なお、不動産小口化商品の評価方法見直しは、2027年(令和9年)1月1日以降の相続・贈与から適用されます。制度変更前のタイミングで贈与を検討する動きも想定されますが、高額な取引については「総則6項」による評価見直しのリスクも否定できません。そのため、単に時期を優先するのではなく、取引の合理性や経済的実態を踏まえたうえで、慎重に判断する姿勢が求められます。

教育資金一括贈与の非課税措置終了

教育資金の一括贈与に係る非課税措置は、2026年3月31日をもって新規利用が終了し、新たな口座開設や追加拠出はできなくなりました。ただし、すでに制度を利用している場合は、預け入れ済みの資金について引き続き非課税での使用が可能です。受贈者が30歳に達するまでという従来の枠組みも維持されており、教育費としての支出であれば従来どおり払い出しができます。

教育資金を非課税で贈与する方法を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】教育資金贈与を非課税にする3つの方法|手続きや改正ポイントを解説

出典:文部科学省|教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置(外部リンク)

個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の延長

個人事業承継における納税猶予制度について、適用に必要な「個人事業承継計画」の提出期限が2年6か月延長されました。

個人事業承継における納税猶予制度は、個人事業主が保有する事業用の土地や建物、機械設備などを後継者が引き継ぐ際、一定の要件を満たすことで相続税・贈与税の納税を猶予するものです。個人事業では、店舗や工場、診療所、機械設備などが収益活動に直結しているため、相続時に納税資金を確保できなければ、資産の売却や借入による対応が必要となり、事業継続に支障が生じる可能性があります。こうしたリスクを回避し、円滑な承継を後押しするのが本制度の役割です。

ただし、対象となるのはあくまで「事業の用に供されている資産」であり、家事用との区分や事業用割合の整理が必要です。また、承継後も事業継続や資産保有に関する要件を満たし続ける必要があるため、適用前の段階で資産構成や承継後の運用体制を具体的に設計しておくことが重要です。

出典:国税庁|個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除(個人版事業承継税制)(外部リンク)

非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予特例延長

法人を対象とした事業承継税制についても、特例適用に必要な「特例承継計画」の提出期限が1年6か月延長されました。

中小企業では、自社株式の評価額が高額化しやすく、納税資金の確保が事業承継の大きな障害となるケースも珍しくありません。非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予特例の活用により、株式を手放すことなく経営権を維持したまま承継を進められるでしょう。

ただし、適用には雇用の維持や株式の継続保有、代表者要件など、承継後の管理要件が厳格に定められています。制度の適用可否だけで判断するのではなく、経営体制や株式構成の将来像を踏まえたうえで検討する必要があります。

出典:国税庁|非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)(外部リンク)

医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の延長

個人医院や医療法人の承継を支援する納税猶予制度についても、適用期限が3年間延長されます。

従来の医療法人には、出資者が財産権を持つ「持分」が残るケースが多くあります。承継時には、持分に対して高額な相続税・贈与税が課される点が課題となっていました。

例えば、出資持分の評価額が数億円規模となる場合、その評価額に応じた相続税が発生します。後継者が納税資金を用意できなければ、資産の取り崩しや借入に頼らざるを得ません。結果として、資金繰りの悪化を招き、診療体制の維持が難しくなるおそれがあります。

本制度は、こうした税負担を軽減し、医療提供体制の維持を図るための仕組みです。国は地域医療の安定を目的として、制度の適用期限を繰り返し延長しています。

出典:国税庁|医療法人の持分についての相続税の納税猶予の特例(外部リンク)

農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の延長

2026年度の税制改正では、本制度の適用対象となる農地を収用や交換などやむを得ない理由で譲渡した際に課される利子税について、全額を免除する措置の適用期限が5年間延長されました。

農地は換金性が低く、相続税や贈与税の負担が経営の継続に直接影響します。そのため、税負担による離農を防ぎ、農業基盤を維持する観点から、本制度および関連措置の継続が図られています。

出典:農林水産省|農地に関する税制特例について(外部リンク)

所有権移転登記等に対する登録免許税の軽減措置の延長

令和8年度税制改正では、不動産登記に係る登録免許税の軽減措置についても適用期限が延長されました。具体的には、以下のように期限が延長されています。

土地の売買による所有権移転登記等の軽減措置:令和11年3月31日まで
住宅用家屋の所有権の保存登記等の軽減措置:令和9年3月31日まで
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の軽減措置:令和9年3月31日まで

登録免許税の軽減措置および免税措置は、所有者不明土地問題への対応を目的として創設されました。軽減措置の適用可否によって登録免許税の負担は大きく変わるため、適用期限を踏まえたうえで登記の時期を検討することが重要です。

出典:法務局|相続登記の登録免許税の免税措置について(外部リンク)

相続税の税制改正はいつから適用されるのか

2026年度(令和8年度)の税制改正は、下表のように制度ごとにスタートする時期が異なります。

直近で影響が出る改正については早急な対応が必要となる一方、施行まで時間がある制度については中長期の視点で準備が求められます。適用時期を起点に対策の順序を整理し、本来適用できた制度を逃さないよう計画的に対策を進めることが重要です。

税制改正を踏まえた今後の相続対策

2026年度の税制改正により、これまで有効とされてきた相続対策の前提が徐々に変わりつつあります。特に不動産や贈与を活用した手法については、同じ考え方のままでは期待した効果が得られない可能性もあるでしょう。

そのため今後は、個別の制度を前提とした対策ではなく、以下のような資産全体を見据えた戦略の見直しが重要です。

不動産取得タイミングの見直し
生前贈与戦略の再設計
資産ポートフォリオの最適化
専門家連携による資産防衛体制の構築

それぞれを詳しく見ていきましょう。

不動産取得タイミングの見直し

不動産による相続対策は引き続き有効な手段ですが、「いつ取得するか」という視点がこれまで以上に重要になります。

2026年度の税制改正により、相続直前に取得した不動産は評価額が下がりにくくなりました。そのため、相続が近づいてから取得するのではなく、5年以上の保有を前提に早い段階で組み入れる必要があります。取得時期が遅れると、想定していた節税効果を得られない可能性があるため注意しましょう。

今後は、「節税になるか」だけでなく、「保有目的や収益性、相続後の分割しやすさ」まで含めて取得タイミングの検討をおすすめします。

生前贈与戦略の再設計

今後の相続対策では、教育資金の援助を一括ではなく、長期的な資産移転の一部として捉え直す必要があります。

具体的には、以下3つのアプローチを組み合わせ、計画的に資産を移転します。

都度贈与による非課税枠の活用
新NISAなどを活用した運用資金としての段階的な移転
贈与税の基礎控除枠の活用 など

相続時精算課税制度や暦年贈与も含め、「どの資産を・誰に・いつ移転するか」を整理したうえで、移転の順序とタイミングを設計することが重要です。

生前贈与戦略のポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】【年末対策】相続贈与一体化・7年ルールを見据えた生前贈与のポイント

資産ポートフォリオの最適化

今後の相続対策では、個別の節税手法ではなく、資産全体のバランスをどう整えるかが重要となります。

税制改正により、特定の資産に偏った構成はリスクが高まりました。例えば、不動産に偏れば評価変動や流動性の問題を抱えやすく、現金が多すぎればインフレによる価値の目減りが生じます。そのため、不動産・金融資産・事業用資産をバランスよく保有し、それぞれに役割を持たせる視点が重要です。

収益性・流動性・税務のバランスを意識することで、相続時の負担を抑えながら、分割のしやすさも確保できるでしょう。

専門家連携による資産防衛体制の構築

税制改正を踏まえた相続対策では、「誰に相談するか」が成果を大きく左右します。なぜなら、税務・不動産・金融・法務といった複数分野を横断した判断が求められ、単一の専門家のみで最適な対策を導くことが難しくなっているためです。

例えば、不動産の組み替えを検討する際には、税務上の評価に加え、融資条件、市場動向、相続後の管理負担まで含めた判断が必要です。各分野を個別に検討すると意思決定の前提が揃わず、資産全体として整合性を欠くリスクが生じます。

リスクを回避するには、税理士を起点とした専門家連携が有効です。税務シミュレーションをベースに、不動産会社や金融機関と連携すれば、資産全体を見据えた一貫性のある対策を設計できます。早い段階から専門家と連携し、現状分析から実行までを一体で進める手法は、将来のリスクを抑えた資産防衛に寄与するでしょう。

相続税のクロスティでは、相続税申告だけでなく、「現状分析 → 課題抽出 → 戦略設計 → 実行支援」までを一貫してサポートします。資産全体を踏まえた相続対策を検討している方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

2026年度税制改正は、従来の節税手法に依存した対策を見直し、資産全体を踏まえた長期的な視点で相続対策を再設計する必要性を示しています。今後は、個別の手法に依存するのではなく、早い段階から現状を把握し、計画的に対策を進めることが重要です。

最後に

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私たち、相続税のクロスティは、税理士法人の相続税を専門とする事業部から発足し、母体である名古屋総合税理士法人は創業以来50年以上、愛知県名古屋市にて東海エリアを中心に相続税専門の税理士として、皆さまの相続手続きをお手伝いしてまいりました。

相続税は税理士にとっても特殊な分野の税目です。相続税の高度な知識だけでなく、民法や都市計画法など幅広い知識が必要な他、年月をかけ培った経験やノウハウが大変重要になる分野です。税額を安くする制度は多数ありますが、その選び方ひとつで大きくお客様の納税負担は変わります。
故人から受け継いだ大切な遺産を、少しでもお守りすべく、私たち相続税のクロスティは各士業(司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士など)や国税OBなど各専門家と提携し、お客様におすすめの制度と対策をご提案させていただいております。私たち相続税のクロスティは「相続でお困りの方を一人でも減らしたい」という想いから、初回のご相談は無料で対応いたしております。「相続の仕組みを知りたい」「相続税申告が必要かわからない」「まずは見積りだけほしい」など、まずはどんなことでもお気軽にご相談ください。ぜひ、お会いできる日を楽しみにしております。

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監修者:細江 貴之

名古屋総合税理士法人 代表税理士 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

監修者プロフィール:
相続税に関するセミナー講師を年間100回程度務めるほか、大手信託銀行・不動産管理会社等の税務顧問や、日経新聞社講師、南山大学非常勤講師を務めている。
現在代表を務める名古屋総合税理士法人は、資産家の生前節税対策・法人化節税を得意とし、累計 1,000 件を超える名古屋最大級の相続税申告実績を誇り、相続税相談についての面談数は年間 500 件を超えるほか、数多くの不動産オーナーの顧問税理士を務めている。
【主な活動実績】
・著書「知識ゼロからの相続の教科書」は相続税/贈与税カテゴリーにて、出版週で第1位を獲得
・プロフェッショナルな会計ファームに授与される「Best Professional Firm」を3年連続で受賞
・書籍「相続に強い頼れる士業・専門家50選」に選出
・南山大学の非常勤講師


本記事のよくある質問

Q. 2026年度の税制改正による「貸付用不動産」の評価方法の変更点とは?
A. 税制改正により、相続開始前5年以内に取得または新築した貸付用不動産は、取得時の価格を基準に地価の変動などを反映した価額の約80%で評価される仕組みに変更されます。従来のように路線価や固定資産税評価額を基準とした、短期的な不動産取得による税負担の抑制(節税)は難しくなる見込みです。

Q. 貸付用不動産の新ルールにおいて、有効な相続対策を立てるポイントは?
A. 改正新ルールには、不動産の取得から5年を経過していれば対象外となる救済措置が設けられています。そのため、不動産を活用した相続対策は今なお有効です。今後は、相続直前の短期的な取得による節税ではなく、5年・10年先を見据えた中長期的な計画と、早い段階からの準備が重要になります。

Q. 不動産小口化商品の評価方法はどのように見直されますか?
A. 取得時期にかかわらず、相続時または贈与時における取引価格(時価)を基準に評価する取扱いに見直されます。事業者が提示する買い取り価格や実際の売買実例価額などの客観的な指標を基に評価額へ反映されるため、市場価格との差を前提とした従来の節税効果や短期的な資産圧縮は成立しにくくなります。

Q. 不動産小口化商品の評価方法の見直しはいつから適用されますか?
A. 2027年(令和9年)1月1日以降の相続・贈与から適用されます。制度変更前に贈与を検討する動きも想定されますが、高額な取引については「総則6項」による評価見直しのリスクも否定できません。時期を優先するだけでなく、取引の合理性や経済的実態を踏まえて慎重に判断する必要があります。

Q. 教育資金一括贈与の非課税措置は終了しましたか?既存の利用者はどうなりますか?
A. 2026年3月31日をもって新規利用は終了し、新たな口座開設や追加拠出はできなくなりました。ただし、すでに制度を利用している場合は、預け入れ済みの資金について引き続き非課税での使用が可能です。受贈者が30歳に達するまでという従来の枠組みも維持され、教育費であれば払い出しできます。

Q. 個人事業承継における納税猶予制度の「個人事業承継計画」の提出期限はどうなりますか?
A. 2026年度税制改正により、提出期限が2年6か月延長されました。本制度は、後継者が事業用の土地や建物、機械設備などを引き継ぐ際、相続税・贈与税の納税を猶予するものです。納税資金の確保が難しく事業継続に支障が生じるリスクを回避し、円滑な事業承継を後押しする役割を持っています。


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