相続財産を受け取った場合の年末調整|確定申告の必要性や注意点を解説
家族を亡くした直後は、気持ちの整理がつかないまま、葬儀や役所での手続きに追われ、心身ともに大きな負担を抱える時期です。そんな中で、「年末調整はどうすればよいのだろう」「収入が増えて扶養控除から外れるのではないか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、相続や贈与が発生した年の年末調整についてわかりやすく解説します。相続財産・扶養控除・生命保険金など注意すべきポイントも紹介するのでぜひ参考にしてください。
目次
・遺産相続時の年末調整・確定申告の必要性
・配偶者が多額の財産を受け取っても扶養からは外れない
・相続した財産に所得税が課税される5つのケース
・亡くなった方が生前に得ていた所得の清算が必要なとき
・まとめ
遺産相続時の年末調整・確定申告の必要性
結論として、相続で受け取った財産そのものは、年末調整や確定申告の対象にはなりません。ただし、受け取った財産を売却した場合や、亡くなった方の給与や年金には、所得税が発生する可能性があります。また、死亡退職金や保険金の受け取りなどは、相続税の対象となるケースもあるため、税金の種類を正しく区別しておくことが大切です。
まずは、それぞれの基本をきちんと押さえておきましょう。
年末調整・確定申告とは
年末調整とは、1年間に支払われた給与に対して、企業が毎月源泉徴収していた所得税額を精算する手続きです。会社員や公務員などの給与所得者は、勤務先が年末に年末調整するため、通常は個人で確定申告する必要はありません。例えば、勤務先に勤めていた家族が年の途中で亡くなっても、会社は死亡時点までに支払いが確定している給与や賞与の総額を対象に年末調整を行います。
一方、確定申告は、給与所得以外の事業所得や不動産所得なども含め、1年間の所得にかかる税額を最終的に計算し、納める手続きです。通常は、個人事業主や給与以外の収入がある方が対象です。
ただし、会社員でも以下のようなケースでは、本人が確定申告を行う必要があります。
✓ 年収が2,000万円を超える場合
✓ 年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
✓ 本業以外に収入がある場合 など
また、亡くなった方が生前に確定申告をしていた場合や、死亡した年に特別な事情がある場合などは、相続人による準確定申告が必要です。期限までに申告を行わないと、未納の所得税に加えて加算税や延滞税が発生する可能性があるため注意しましょう。
年末調整の概要について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】【2025年最新版】年末調整の書き方と記入例|全申告書を徹底解説
相続税・贈与税・所得税の違い
相続や贈与、所得には、以下のようにそれぞれ課税の仕組みや対象が異なります。
✓ 相続税:亡くなった方から受け継いだ財産が、基礎控除を超える分に課税
✓ 贈与税:生前に他人から贈与された財産が、年間110万円を超える分に課税
✓ 所得税:1年間に得た所得に対して課税
どちらもお金や財産を受け取ることには変わりませんが、取得の経緯によって課税される税金が異なるのです。例えば、親からの相続で不動産や預貯金を受け取っても、相続人の「所得」とはみなされません。そのため、年末調整で税金を精算する必要はなく、受け取った財産に応じて相続税の申告を別途行うことになります。
相続と所得の関係について振り返りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】遺産相続で所得税は課せられる?課税されるケース、申告方法を解説
配偶者が多額の財産を受け取っても扶養からは外れない
配偶者が相続により多額の財産を受け取ったとしても、「扶養」から外れることはありません。なぜなら、扶養の判定は「働いて得た収入(所得)」を基準に行われるからです。
そもそも「扶養」とは、生活費を主に負担して家族を支える関係を指します。税制や社会保険上によって考え方が少し異なりますが、いずれも生活の実態と所得の有無で判断されます。税制上の扶養(扶養親族)は、所得税や住民税の控除を受けられる制度です。一方、社会保険上の扶養(被扶養者)は、健康保険などで保険料を支払わずに保障を受けられる家族を指します。
どちらの制度でも「相続財産」は扶養判定の対象外のため、相続金の受け取りを理由に年末調整や確定申告で申告する必要も基本的にありません。ただし、相続した財産から収入が発生した場合は、課税対象となるため、別途確定申告が必要になる点に注意が必要です。
相続した財産に所得税が課税される5つのケース
遺産に所得税が課せられる可能性があるケースは以下の5つです。
● 相続財産を売却し、利益(譲渡所得)が発生したとき
● 相続財産から収益が発生したとき
● 保険料負担者が死亡保険金を受け取ったとき
● 死亡後に未支給の年金を受け取ったとき
● 亡くなった方が生前に得ていた所得の清算が必要なとき
それぞれを詳しく見ていきましょう。
相続財産を売却し、利益(譲渡所得)が発生したとき
相続によって取得した以下の資産を売却して得た利益は、譲渡所得として所得税や住民税の課税対象になります。
✓ 土地や建物
✓ 株式や債券
✓ ゴルフ会員権
✓ 美術品 など
譲渡所得は、売却によって得た収入から、取得費や売却にかかった経費などを差し引いて算出します。相続の場合、亡くなった方が資産を取得した際の価格を引き継ぐ点が特徴です。また、遺産分割が済んでいなければ、相続人全員が法定相続分に応じて課税対象となります。分割が完了していれば、実際にその財産を取得した相続人が納税義務を負います。
ただし売却では、得られる金額が大きくなるほど税負担も増えてしまうのも事実です。そのため、相続税を支払った相続人には「取得費加算の特例」が設けられています。亡くなった方の死亡日から3年10ヶ月以内に相続財産を売却すれば支払った相続税の一部を取得費に加えられるため、譲渡所得を小さく抑えられます。ただし、相続税を実際に納めていない人は対象外です。売却を検討する際には、課税の仕組みと控除の可否を確認し、税負担を抑えられる方法を検討することが重要です。
出典:国税庁|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(外部リンク)
出典:国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(外部リンク)
相続財産から収益が発生したとき
相続した不動産や株式配当などから生じた利益も課税対象です。例えば、アパートや駐車場を相続した場合に得られる家賃収入は「不動産所得」として扱われます。不動産所得は「総収入金額から必要経費を差し引いた金額」で計算します。経費には、固定資産税や修繕費、管理費などが含まれます。支出を経費として認めてもらうためにも、領収書や明細書などの証拠書類をきちんと保管しておくことが大切です。
なお、不動産所得や配当所得などは、基本的に「総合課税」の対象です。総合課税では、給与所得や事業所得などと合算して課税額を計算し、所得が多いほど税率が上がる超過累進税率が適用されます。なお、一部の所得については「分離課税」を選択できる場合もあるため、所得の種類ごとに課税方法を確認しておくことが大切です。
保険料負担者が死亡保険金を受け取ったとき
死亡保険金を受け取ると、通常は相続税の対象となります。ただし、保険料を支払った人と受取人が同じであれば、相続税ではなく所得税の対象になります。また、受け取り方法によっても課税方法が異なります。一時金で受け取る場合は「一時所得」として、年金形式で受け取る場合は「雑所得」と扱われます。
課税の種類や金額は契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の関係で変わるため、申告前に整理して理解しておきましょう。
生命保険における相続税上の取り扱いについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】名義保険とは?相続税・贈与税の取り扱いと相続対策としての活用方法
死亡後に未支給の年金を受け取ったとき
亡くなった方が生前に受け取る予定だった年金(未支給年金)は、一時所得として所得税の課税対象となります。一時所得には50万円の特別控除があり、年間の合計額が50万円以下であれば申告は不要です。控除を超えた分については、確定申告が必要になります。
なお、未支給年金には以下の2つがあり、課税の扱いが異なる点もポイントです。
✓ 公的年金→所得税
✓ 私的年金(企業年金や個人年金保険など)→相続税、または所得税
また、未支給年金は自動で支払われるわけではなく、相続人自身が請求手続きを行う必要があります。どの年金を誰が受け取るのか、請求先はどこかを事前に整理しておくと、手続きをスムーズに進められます。
亡くなった方が生前に得ていた所得の清算が必要なとき
亡くなった方が生前に得た所得は、相続人が代わりに「準確定申告」し納税する必要があります。準確定申告では、亡くなった年の1月1日から死亡日までに得たすべての所得を計算して、所得税を確定させます。
申告は、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人全員で行わなければなりません。代表者が単独で申告できないため、事前に相続人全員で協議して手続きを進める必要があります。
準確定申告が必要になる主なケースは以下の通りです。
● 自営業による事業所得がある場合
● アパートや駐車場などの不動産所得がある場合
● 複数の会社から給与を受け取っていた場合
● 年間の給与が2,000万円を超える場合
● 年金の受給額が400万円を超える場合 など
申告を行わない場合は、延滞税や加算税などペナルティが課せられるため、余裕をもって手続きを進めましょう。
また、以下のケースでは払いすぎた税金の還付が受けられる可能性があります。
● 年末調整が行われなかった場合
● 各種控除を適用できる場合 など
還付の申告は権利であり、行わなかったとしても罰則はありません。ただし、還付金がまとまった金額になる場合は、申告をおすすめします。
なお、準確定申告だけであれば、確定申告の経験がある方にはそれほど難しくありません。しかし、相続税の申告も必要になる場合は、亡くなった方の不動産、現金、預貯金、株式などすべての財産を評価・計算する必要があるため、手続きが複雑になります。そのため、相続税申告が必要な場合は、相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
相続税のクロスティは、社内在籍の司法書士をはじめ専門家同士が連携し、お客様に寄り添った最適なアドバイスと利便性の高いサービスを提供します。相続や贈与に関わる税金や手続きについて不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
相続が発生すると、遺産に関わる税務手続きが複雑になりやすく、どの手続きを優先すべきか迷うケースも珍しくありません。遺産自体には通常、相続税が課されますが、相続財産から利益があった場合や死亡保険金・未支給年金を受け取った場合は、所得税の申告も必要になります。
また、亡くなった方が生前に得た所得の申告が済んでいなければ、相続人が代わって「準確定申告」を行わなくてはいけません。期限を過ぎると延滞税などのリスクが生じるため、手続きや税額の計算に不安がある方は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
最後に
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名古屋総合税理士法人 代表税理士 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士
監修者プロフィール:
相続税に関するセミナー講師を年間100回程度務めるほか、大手信託銀行・不動産管理会社等の税務顧問や、日経新聞社講師、南山大学非常勤講師を務めている。
現在代表を務める名古屋総合税理士法人は、資産家の生前節税対策・法人化節税を得意とし、累計 1,000 件を超える名古屋最大級の相続税申告実績を誇り、相続税相談についての面談数は年間 500 件を超えるほか、数多くの不動産オーナーの顧問税理士を務めている。
【主な活動実績】
・著書「知識ゼロからの相続の教科書」は相続税/贈与税カテゴリーにて、出版週で第1位を獲得
・プロフェッショナルな会計ファームに授与される「Best Professional Firm」を3年連続で受賞
・書籍「相続に強い頼れる士業・専門家50選」に選出
・南山大学の非常勤講師
本記事のよくある質問
Q. 年末調整・確定申告とは
A. 年末調整とは、1年間に支払われた給与に対して、企業が毎月源泉徴収していた所得税額を精算する手続きです。確定申告とは、給与所得以外の事業所得や不動産所得なども含め、1年間の所得にかかる税額を最終的に計算し、納める手続きです。通常は、個人事業主や給与以外の収入がある方が対象です。
Q. 配偶者が多額の財産を相続した場合、扶養から外れなければならないのでしょうか?
A. 配偶者が相続により多額の財産を受け取ったとしても、「扶養」から外れることはありません。なぜなら、扶養の判定は「働いて得た収入(所得)」を基準に行われるからです。
Q. 死亡後に未支給の年金を受け取ったとき、確定申告は必要か?
A. 亡くなった方が生前に受け取る予定だった年金(未支給年金)は、一時所得として所得税の課税対象となります。一時所得には50万円の特別控除があり、年間の合計額が50万円以下であれば申告は不要です。控除を超えた分については、確定申告が必要になります。
Q. 亡くなった方が自営業による事業所得がある場合、確定申告は必要か?
A. 亡くなった方が生前に得た所得は、相続人が代わりに「準確定申告」し納税する必要があります。準確定申告では、亡くなった年の1月1日から死亡日までに得たすべての所得を計算して、所得税を確定させます。
Q. 準確定申告で払いすぎた税金の還付が受けられる可能性がある場合とは?
A. 年末調整が行われなかった場合、各種控除を適用できる場合 など
Q. 相続財産を売却したら税金はかかるのか?
A. 利益が発生した場合、譲渡所得として所得税や住民税の課税対象になります。




